17話 ページ18
自分でも、ブラコンだってわかっている。
ワガママを言っているのだって、わかっている。
でも、国民的トップアイドルになった千斗とただのメイクアップアーティストの私じゃあ話にならない。
おまけに子供が二人いる。
私と千斗の関係は、あの時に終わった。
好きでもなんでも、終わったものは終わったのだから、引きずるものじゃない。
「……Re:valeのスキャンダルネタは言わないから、兄さんから千に言って。"私と仕事以外で、もう関わらないで"って」
「……千が聞いてくれる保証はないぞ」
「知ってるわよ、ダメ元なんだから。……でも、関わらないで欲しいのは本当なの」
だって、私は千斗じゃなくて晶人さんを……。
だから、もう関わらないで欲しい。
「……ちゃんと愛せていたかわからない、なんて悩むってことは、AはAなりに愛していたんだよ」
ぽんぽん、と兄さんに頭を撫でられた。
愛せていた?
本当に? 私は、晶人さんを、ちゃんと?
「A、ワガママになっていいんだよ。……五年間、我慢していたんだろ? 頼っていいんだよ。甘えていいんだよ」
ポロポロ、涙が止まらなくなった。
兄さんは優しく私を抱き締めてくれた。
兄さんにいなくならないで欲しかった。
千斗と別れたくなかった。
晶人さんが愛してくれた。
空と海は産みたくて産んだ。
兄さんと千斗のRe:valeを支えたかった。
私は、Re:valeを輝かせたかった。
だから、メイクアップアーティストになって……。
……あ。
「う、……っ、ひっく……」
なんで、忘れていたんだろう。
私は声を押し殺したくて、兄さんを抱き締めて泣いた。
兄さんは背中をぽんぽん、としてくれた。
ごめんなさい、百瀬くん。
私、誰かのせいにして楽になりたかっただけなんだ。
百瀬くんのせいにして、楽になりたかったんだ。
だから、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……。
謝らなきゃ……。
ああ、でも。
九条は、許せない。
ゼロも、許せない。
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作者名:通りすがり | 作成日時:2019年7月8日 9時