其之拾参 ページ14
──グリスside──
俺の近くで座り込んだ女。
負傷した脇腹は血が滲んでいて、傷口が深いのか少しずつ血の滲みが広がっている。
マルコ隊長たちはその様子を見て流石に焦った。
ハルタ隊長が「早く手当てを、」と言いだしたが、女は首を横に振って俺を指差して「こっちが先です。ちゃんと最後まで見届けてから」と断る。
「見届けるだと…ふざけんな！」
「アンタこそ、何時まで悪ぶってんの？いい加減素直になりなよ」
「何言ってんだ！これが俺だ！！この船に乗ってたくさんの人間を食って強くなる計画が台無しになったじゃねぇか！！折角好機が来たってぇのにふざけんな！！早く隊長たちも食ってやる！！食らい尽くして、」
「嘘だよ」
その言葉に俺は目を見開き、直ぐにまた「俺は！！」と言いだしたが、女が宥めるように頭を撫でた。
「もういい。嘘をつかなくて」
コイツには、俺の感情が分かるのか…俺の…
「最初、君は確かに皆を食べる目的でこの船に乗ったかもしれない。でも触れ合っている内に、家族だと言われている内にどんどん思いやりが強くなって、どんどん迷って。鬼の飢餓状態は想像を絶する苦しさだったでしょ？仲間を殺してしまった時だって辛かったでしょ…？」
何で、この女には、俺の気持ちが解るんだよ…
やめろよ…そんな泣きそうな顔で俺を見ないでくれ…
こっちまで涙が出てくるじゃねぇか…
「うわあああああああ！！」
涙が溢れて止まらなかった。
辛かった。苦しかった。
本能に負けて皆を殺してしまった時も涙が止まらなかった。
悲しかった。悲しかった。
皆の、イゾウ隊長の顔を見た時だってごめんなさいって謝って泣き出したかった。
本当は皆ともっと一緒にいたかった。
皆と楽しく過ごしたかった。
もっともっともっと。
ごめんなさい、ごめんなさい。
もう身体も顔も少しずつ崩れてきて、もう俺はいなくなる。
せめて…許されないことだけど…
許されないことをしたけど…
「皆…イゾウ、隊長…」
せめて…
俺がイゾウ隊長の名前を呼ぶと女は俺の頭を抱えてイゾウ隊長の方へ向けてくれた。
もう時間が無い…涙が止まらない…
俺は…俺は…
「ごめん、なさい…ごめんなさい……俺、本当は…もっと………も、っと…」
頭が全て崩れ落ちた…
良かった…せめて……謝れて…良かった…
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シンヤ(プロフ) - 続きとても楽しみにしています (2022年11月9日 10時) (
レス) @page31 id: 42d6be6a70 (このIDを非表示/違反報告)
ミチルンルン(プロフ) - 結構好きかも、更新楽しみに待ってます！ (2022年6月10日 21時) (レス) @page31 id: 107ef6d634 (このIDを非表示/違反報告)
狐 - 凄く面白いと思いました。これからも頑張ってください！応援してます！ (2020年10月25日 1時) (レス) id: 0f94a784a5 (このIDを非表示/違反報告)
寿 ライラ(プロフ) - 凄い面白いです！！続き楽しみです！！更新頑張って下さい！！待ってます！！ (2020年10月24日 0時) (レス) id: 3d43c01a40 (このIDを非表示/違反報告)
春葵(プロフ) - シンアさん» ありがとうございます。更新頑張ります。 (2020年9月21日 18時) (レス) id: b1ab373c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春葵 | 作成日時：2020年9月7日 19時
