入学 ページ2
「焦凍」
私が呼びかけると、先を歩いていた焦凍がこちらを振り返った。
私たちは春から雄英高校に通う。
私たちは推薦で一足早く受験を終えたものの、校内のピリピリした雰囲気に追われ、学校でゆっくりすることも出来ず家路を辿っていた。
まだまだ気温は低い、しかし私にとっては最高の季節である冬。テンションの上がった私が地面を凍らせてしまったのを、焦凍が仕方ないなと言いたげに少しだけ笑って彼の左側で溶かした。
私は彼にお礼を言うと、個性を使わないようにしながら、でも軽いステップを踏んで歩く。
今でも夢なんじゃないのかと思う。だって、あの雄英に推薦で入学できるなんて！しかも焦凍と一緒なんて！
「来年からもよろしくね！」
焦凍は頬を緩めてああ、と相槌を打った。
春への希望に、胸を躍らせている。
今日も今日とて焦凍とともに学校へ向かっていた。
ただ、いつもの中学校とは違う。今日から雄英高校に通うのだ。
新しい制服に興奮し、思わず鏡を凍らせてしまったのはご愛敬というやつだ。
電車に揺られながら、少し暖かくなった空気を肺いっぱいに吸い込む。
雄英高校は、もうすぐ見えてくる。
2メートル以上はあるんじゃ無いかというくらい大きい、1-Aと書いてある扉を開け、教室に入った。まだ全然人はいないようでがらんとした教室。どうやら出席番号順に並んでいるらしく、八百万さんの後ろである私の席だけ一つ飛び出ていた。焦凍のななめ後ろのこの席は、みんなの席をよく見渡せた。
私は椅子を引いて焦凍の席に近づけた。怪訝そうな顔をする焦凍にお話ししようと言うと心得たとばかりに、焦凍も椅子を動かして私に向き合うようにした。
推薦入試で出会った八百万さん、改め百ちゃんと自己紹介をしたり段々騒がしくなる教室を見たりしているうちにクラス全員がそろったようで、私たちの担任だという相澤先生が黄色い寝袋から体操服を取り出した。
「早速だが、これを着てグラウンドへ出ろ」
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作者名：阿弥 x他1人 | 作成日時：2021年9月4日 18時
