人生万事塞翁が虎 6 ページ8
「え？ ひっ！ ちょっ、取れない！」
「簡単に腕が取れたらホラーだよ」
Aは右腕を振り回す。どんどん涙が目に溜まっていき、赤くなる。
「そんなに、虎が嫌いなのかい？」
「嫌いとかの次元じ…ゃ、へっくしゅん！ げほっ、ひっくしゅ！ ごほ、ごほごほ、ごほ」
Aのくしゃみと咳が激しくなり、ゼーゼーと息苦しく、ヒューヒューと胸から音が出る。酸素を求めて息を吸うが、空気を吐ききっていないので、少ししか入ってこない。
「太宰！ 早く無効果しな！」
与謝野は、少女の様子を見ると血相を変えて駆け寄る。太宰は、急いで右腕に触れるが、症状は収まらない。
「馬鹿かい！ 腕を振り回したらアレルゲンが飛び散るだろう！」
アレルギーの原因となるアレルゲンは、動物の体内や毛に付着しており、動くと空気中を埃や塵と一緒に舞い、其れが体に入り駆除しようと体が頑張りすぎた結果、体調を悪化させることをアレルギーと云う。
小麦粉が入ったザルを振り回せば、小麦粉が空気中を舞うように、アレルゲンを持つ動物を振り回せば、アレルゲンがより多く空気中を漂う。
Aは、突然の出来事にその事を忘れ、結果、何時もならもう少し遅く出る筈の症状が早く、より酷く出てしまった。
与謝野は、動物アレルギーの症状だとすぐに見抜き、偶々持っていた呼吸器で喘息を抑えた。Aは、呼吸を整えながらもう一度眠りについていく。探偵社の面々は、安心からゆっくりと息を吐いた。
「異能力との相性が悪すぎるな。探偵社に入ってきても役には立たないだろう」
「じゃあ、置いて帰るんですか？」
国木田は、賢治の質問に悩む。少女一人を置いて帰るほど国木田は冷酷ではない。
「まだ症状が全て収まった訳じゃないよ。取り敢えず、探偵社に入れるか入れないかは置いといて、連れて帰らないとねぇ」
Aの目はまだ腫れ、時々苦しそうに咳をする与謝野の言葉に、国木田は苦々しく頷いた。
誰が背負って帰るか話している間に、傍観していた乱歩はAの側に屈む。
「へぇ。此れは…」
「乱歩さん、帰りますよー」
乱歩は、賢治の言葉に出口へ踵を返す。Aは、その間に国木田に背負われていた。じゃんけんで負けたらしい。
此れから、面白くなりそう。
乱歩は、背負われる少女にほくそ笑んで、懐の飴を取り出して口に放り込んだ。
此れで、人生万事塞翁が虎編は終了です。次頁から或る爆弾編に入ります。
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←人生万事塞翁が虎 5
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 26人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まゆ - 面白かったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2017年11月14日 14時) (
レス) id: 8c0a96a096 (このIDを非表示/違反報告)
緩奈 - 咲音さん» うちの学校でも結構流行ってますね。咲音さんも気をつけてください (2017年2月8日 20時) (レス) id: 9261dd0ed9 (このIDを非表示/違反報告)
咲音(プロフ) - コメントありがとうございます！ 楽しんでいただけてとても嬉しいです。風邪など流行っていますので、ご自愛ください。 (2017年2月4日 11時) (レス) id: 659bbac276 (このIDを非表示/違反報告)
緩奈 - 続き楽しみに待ってます！頑張って下さい (2017年2月2日 20時) (レス) id: 9261dd0ed9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：咲音 | 作成日時：2016年12月24日 15時
