書き散らし寿司

壊れゆくものだから［煉獄杏寿郎夢主］ ページ7

嫌な予感というものは、当たって欲しくないものほど当たるものだ。



炭治郎という少年が訪ねて来て、師範……お義父さんに罵倒され、頭突きしたそうで。


「千寿郎くん、虎寿郎の相手をお願い」

「はい」


虎寿郎は、私と杏寿郎さんとの子。
虎のように勇ましく、と願って付けた名だ。


「……ありがとう、炭治郎くん」

「い、いえ！」



そこから他愛もない話をした。
わざわざ訪ねて来てくれた彼には感謝しかない。

杏寿郎さん、あなた、お義父さんを恨まなかったのですね。


「……炭治郎くん。……ほんの一握りでいいから、幸せを見つけて。少しだけの、幸せを……」

「……はい」


彼を千寿郎くんと見送り、ぐずる虎寿郎をあやす。
まだ、一歳だもの。ぐずるわ。





友人はいなくなった。
一人は、想い人の腕の中で死んだ。
上弦の弐に殺されたらしい。
深追いをして、殺されたそうだ。救援に他の隊士達が駆け付けた時は手遅れだったようで。

彼女と想い合っていた男は、静かに涙を流して、冷たい彼女の体を抱き締めたらしい。



もう一人は、行方不明になった。
柱合会議の時、長かった髪を切り揃えて左腕を失った姿で帰って来たと、杏寿郎さんに聞いた。
だが、彼女はまた行方不明になった。
でも鬼を狩り続けてはいるらしい。

彼女は想い人ができたのか。
髪のことを聞いた時、嬉しそうに笑ったのだから。





幸せは、いつかなくなる。
だから噛み締めて、噛み締めて、噛み締めて。
"今"を精一杯生きる。

また私が刀を握る日は、そう遠くないのかもしれない。

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