書き散らし寿司

父と義姉［煉獄杏寿郎夢主］ ページ26

Aさん。兄と結ばれてからは義姉上と呼んでいる彼女は、力持ちで、芯のある女性です。

ある時は兄上より強く。ある時は兄上が守っている。



鬼殺隊に入り、階級が上がるにつれて任務が忙しくなっていくなか、帰ってくると刀を捨てた父上を布団と一緒に干したりして、よく怒鳴られていました。

庭から父上と義姉上の怒鳴り声が聞こえてくると、なぜだか変に安心してしまい、僕はホッとするのです。





「千寿郎くん」

「はい」


身重なのに洗濯物を取り入れて……。
動かない方が体に悪いとはいいますけど……。
でも、もうすぐ産まれそうとお医者様はおっしゃっていたような……。


「お味噌がなかったから、買ってくるわね」

「お味噌くらいなら、僕が」

「私が夕飯の支度する方がまずいんじゃないかしら……」

「あ……」


義姉上はふわりと笑って、パタパタと歩いていった。






廊下で、お腹をおさえて唸る義姉上がいた。
父上が背中をさすり、僕に気付くと大きな声を出した。


「千寿郎！ 医者だ！ 産婆でもいい！！」

「は、はいっ！」


父上は義姉上を鬼から助けて、本当の娘のように接していた。
少し、義姉上に嫉妬してしまう。

それと同時に父上は、根本的な大事な"なにか"は失っていないんだとわかった。




義姉上だって、酒に酔って自棄になった父上に殴られたことがある。
それでも、それでも、それでも。


ああ、やっぱり。羨ましい。

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