療養中[黒死牟夢主] ページ13
人里離れた廃屋は日の光が当たらず、薄暗い。
日輪刀は近くにある。
丁寧に手当てされた体を見て、苦笑してしまう。
まったく、何の気まぐれか。鬼が食わず人を生かすとは。
いや、互いに惚れたのなら、仕方ないか。
「目覚めたか……」
「ああ。手当て、ありがとな。……すまんが、体起こしてくれねぇか?」
彼は何も言わず、ゆっくりあたしの体を起こしてくれた。
左腕がない。本当に、ないんだ。
「……ゴフッ!」
「……」
起こしてもらった途端、肺に貯まっていたいらん空気と一緒に血が吐かれた。
彼は何も言わず、それを綺麗にする。
「……寝とくか……?」
「いや、起きとくよ。……無理矢理呼吸を変えたからな。負担があるんだよ」
「……鬼になれば……こんなことは……ない……」
「鬼になれば、あたしはお前を愛せない」
まだ互いの名すらわからないけど。
でも、惚れたのは事実。
「……あたしは亜双院A。……お前は?」
「……黒死牟……」
「そうか。……なら、黒死牟よ。……少しだけただの恋仲にならないか? 少しだけ、ただの男女に」
「……よかろう。……それが終われば……ただの鬼と……鬼狩りか……」
ただのままごとだ。
腕の感覚に慣れるまででいい。
「……フフ。……お前、あたしが好きだろう」
ああ、死ぬなら。もし死ぬなら。
今ではなく、戦って死にたい。
彼に食われてもいい。
だから、今は。今は、ただの恋人で。
22人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
曼珠沙華 - 脱ニート 改さん» ありがとうございます! 頑張ります! (2019年8月26日 7時) (レス) id: d17bf84966 (このIDを非表示/違反報告)
脱ニート 改(プロフ) - 黒死牟好きなのでありがたいです、頑張ってください! (2019年8月25日 12時) (レス) id: 7c3587721d (このIDを非表示/違反報告)
曼珠沙華 - 文さん» コメント、ありがとうございます。私も黒死牟が大好きなので……。 応援、ありがとうございますm(__)m (2019年8月18日 12時) (レス) id: d17bf84966 (このIDを非表示/違反報告)
文 - わぁ!黒死牟大好きなので、嬉しいです!これからも応援してますね! (2019年8月18日 5時) (レス) id: 1919d6bd28 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:曼珠沙華 | 作成日時:2019年8月18日 2時