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一話 ページ2

A視点

今日も僕はひとり。明日も。明後日も。きっと誰もが言う。


「僕は化物だ。」って。でもね僕は人間だよ。天人じゃないよ。

お願いそんな目で見ないで。化物を見るような目で見ないで。っと心の中で叫んだ。

  でも口にはしなかった。否、出来なかった。それは僕が弱虫だから。
僕が傷つくことに怯えているから。僕はこんな自分が大嫌いだ。

俯き猫を抱っこして歩いていると「あなたがここらで噂になっている化物さんですか?想像の何倍も可愛くてびっくりしました。」男は言った。

僕は静かに「そうだよ。君達からしたら僕は化け物だけど僕からしたら君たちの方がよっぽど化物に見えるよ」僕が自分の思いつく限りの挑発をすると男は笑いながら

「ふふ。確かにあなたからしたらそうですよね。私の名は吉田松陽。あなたの名前は?」

と松陽に聞かれたが、僕に名前なんかなかった。

呼ばれるとしたら化物ぐらいだ。「へぇそうなんですか。」松陽は何かを考えるように言った。

「えっ。もしかして聞こえてた?」僕が俯いて言うと「えぇ。」と言われた。

僕は恥ずかしくて下を向いていると「ふふ。可愛らしいですよA。」
「へ?」突然言われた誰かわからない名前を言われポカンとしていると

「A。これがあなたの名前です。」と松陽に言われた。

僕は嬉しかった。

今までずーっと化物って言われて言い返せなかったけど、次化物って言われたら「僕にはAっていう名前があるんだぞ!」って言い返せる。松陽は僕の思っていることを見透かしたのか「喧嘩はほどほどにしてくださいね。」と言った。

僕が抱っこしていた猫は前足を肩に乗せ僕の頬に頭を寄せ舌で舐め始めた。この子が僕を舐めるのは初めてだった。

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作者名:朱雀蝶 | 作成日時:2022年4月5日 20時

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