↓ バレンタイン 2 ページ17
*
小麦粉、バター、そして板チョコ−−と購入して、少女は店を出る。
店員のお姉さんには、「また？」と苦笑されてしまった。こんなに綺麗な人なら、簡単にバレンタインチョコも作るんだろうなぁと考えて、自分が情けない。
ため息をついてから、すっかり暗くなった道を走り出す。
近道しよう、と細い路地に走り入ったのは、まさに急がば回れだった。
ドンッ！
少女「きゃ！」
大きなものにぶつかって尻もちをつき、強かに腰を打つ。思わず涙目になって上を見上げると、明らかにガラの悪い男たちがこちらを見下ろしていた。
男「あ？なんだガキ、ぶつかって謝罪もなしかよ」
天空闘技場があるこの街では、出場者である荒くれ者が多く集まるために治安は良いとは言えない。
少女「ご……ごめんなさい！」
少女は青ざめて叫んだが、男たちがそれで引き下がるはずもない。
男「これで大怪我でもしていたらどうする気だ？あぁ！？金寄越せよ、買い物の後なら持ってんだろ」
少女「ッ……」
古典的な恫喝だが、それでも怖いものは怖い。しかし少女のお金は、一生懸命バイトをして貯めた大事なお金だ。
男「出せねーなら……」
少女「あっ！？」
紙袋を取り上げられ、小麦粉を地面にぶちまけられる。
男「どーせ不味いもん作るなら、意味ねぇだろ？じゃあな」
少女は俯いて、ぼろぼろ涙をこぼし、小麦粉を集め始めた。
と、その時。
ぶわぁっ、と、白い粉が風に舞いあげられて弧を描く。
くるり、と綺麗な輪を描いて、粉の波は少女の背後の方へと飛ぶ。
それを目で追った少女と、異変に気がついた男たちは、そこに立っている少年に気がつく。
少年の手に、まず小麦粉の袋がキャッチされ、次に粉の波がさらさらと袋の中に収まっていく。
？「食べ物を粗末にしたらいけない−−と、人間から聞いたんだが」
袋の口を閉じて、少年がこちらを見た。吸い込まれそうな漆黒の瞳が、暗闇の中で印象的だ。
？「それに、小麦粉は万能。パン、麺、お菓子には不可欠だろう。知らなかったか？」
男「んだと……？」
男たちが詰め寄る。少年は動じなかった。
男「てめーこそ、痛い目に遭わねーとわかんないか？」
？「……悪いが、早めに終わらせるぞ」
少年がぎゅうっと拳を握る。
？「『これで殴られたくなかったら』、すぐにここから去れ」
ぞわり、男たちの背に悪寒が走る。
−−こいつは只者じゃない
男「舐めやがって……覚えてろ！」
ばいばい、と少年は手を振る。
？「大丈夫か？」
少女「は、はい」
助け起こされた少女は、呆然と少年を見つめた。
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勿忘草 - 実況さんに返事をする夢主さんが面白いwww (2020年6月14日 18時) (
レス) id: a69079c5f6 (このIDを非表示/違反報告)
藤原 黎明 - マーシャさん» ふふふ（≧∇≦） 続編をお楽しみに！応援ありがとうございます！ (2019年6月2日 6時) (レス) id: 862efe2a89 (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ - 黒髪の青年はクロロですねわかります！ 続編頑張ってください！ (2019年6月1日 17時) (レス) id: 9f5cd220aa (このIDを非表示/違反報告)
藤原 黎明 - キラさん» キラさんありがとうございます！！こっからも頑張りまーす！！ (2019年5月19日 1時) (レス) id: 862efe2a89 (このIDを非表示/違反報告)
キラ(プロフ) - やっぱりいつ読んでも面白いですー！！これからも楽しみにしてます！！ (2019年5月17日 22時) (レス) id: b207c7ff5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤原 黎明 | 作成日時：2018年12月29日 23時
