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見た。
見ちゃった。
Aさんのマスクの下。
あんなに見たいと思ってたはずなのに、いざああやって晒されるとなにかイケナイものを見てしまったような気持ちになる。
頭の中がぐるぐるして、動悸が耳に響く。
心を落ち着けるためにストローを啜っても良くならない。
美味しいんだけど、甘さがどこか脳を揺らすような感覚。
俺、変な顔してなかったかな？
だって今回、そう下心ありありのこの間とは違って今回は、そんなことにはなるとはちっとも思ってなかったんだから。
完全に不意をつかれてしまった。
さらけ出された口元がストローに吸い付く様子が脳内でリフレインされていく。
いつも隠れた唇が小さく開いてストローを咥え、中身を吸い出すためにほんの少し口に力が入り、息継ぎのためにまた開放される。
そう、一言で表すとすると。
「かわいい……」
「なにが？」
突然後ろから声がかかって勢いよく振り返る。
ドア側の奥の椅子を陣取ったあろまが、口を少し結んでこっちを見ていた。
「あ、ろま……。いつ来たの」
「5分ぐらい前？声かけたのに無視したのそっちだろ」
声、かけられてただろうか。
全然記憶にない。
「で、なにがかわいーんだよ。どっかでいいねーちゃんでも見つけたか？」
あろまはニヤニヤとしたオヤジくさい顔でこちらに体を乗り出す。
なにを言ってもからかわれそうな雰囲気に、さっきまで飛ばしてた意識をなんとか引き戻して適当に頭を回す。
「えっと、別に……、クロエさんの写真見てただけ」
「なんだ、つまんねーの」
人んちの愛猫をつまんねーとはなんだ。
あっさり騙されてくれたのか、イイとこあったら教えろよ、なんて言いながら話を切るあろまにどこかホッとしながら自分もテーブル前の鏡に向き直る。
あれ、俺今なんでAさんのこと言わなかったんだろ。
この間話したときのあろまだってまったく興味がなさそうな感じではなかったし、俺だけが見たんだぞって言ったらちょっとは羨ましがるかもしれない。
でもなんとなく、なんとなくだけど。
俺だけの秘密にしておきたい気持ちが働いた。
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せとか(プロフ) - けいさん» コメントありがとうございます！お言葉大変嬉しいです！なかなか更新できず申し訳ないですが引き続きよろしくお願いします！ (2021年5月27日 20時) (
レス) id: 2f7108b07b (このIDを非表示/違反報告)
けい(プロフ) - 落ち着いた雰囲気と話の流れがとても好きです！四人の台詞や行動も読んでいて楽しく、主人公の苦悩もこれからどうなるのか楽しみです。かげながら応援しております。 (2021年5月26日 1時) (レス) id: 24cc8291a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せとか | 作成日時：2021年3月24日 19時
