60. B'day ページ10
急ブレーキ。
車は山道で加速しきってないとは言え、ぐん、と引っ張られるような感覚が体に叩きつけられた。
「……運転中にそういうことを言うな」
「あっ、ごめん、」
慌てて顔を上げると、あろまはハンドルに両手をつきそこに頭を乗せて横目でこっちを見ていた。
その目が、欲望と劣情をなんとかギリギリのところで止めている理性を露わにしていて、心がギュッと掴まれる。
思わず胸の前で手を組んで、痛む胸を抱えるように体を縮こまらせて、本当だよ、と小声で付け加えた。
あろまはハンドルの手に顔を埋めて大きくため息をついた。
「……せっかく大事にしてやるって言ってんのに」
「ごめん、でも……しばらく会えないから……」
「……明日」
「……？」
「明日、俺の誕生日だから。帰る前にどっか行こう。……で、そんとき、また考えてやる」
「う、ん……」
そんな冷静に返されてしまうと一気に恥ずかしくなってくる。
いっそ理性を飛ばしてくれたほうがまだ勢いに乗れるのに。
あろまはその後は何も言わずに再度車を発進させ、再び口を開いたのは家に車を止めたときだった。
その間、私は自分の言ってしまったこととあろまの答えに赤面しっきりで、ずっと顔を下に向けていた。
「……ほい。着いたぞ」
「……ん」
「また明日な」
「うん……」
「A、こっち見ろ」
顔を上げると、あろまはサイドレバーを超えて手を私の座る助手席についてこっちに体を乗り出していた。
顔が触れてしまいそうなほど近い。
あろまの空いた手が私の髪を優しく梳く。
「お前本当にいいんだな？」
「う……うん」
「後になって、やっぱお兄ちゃんとはちょっと、とか言わねーな？」
「い、言わないよ！」
「よし」
髪を撫でていた手が後頭部を捉えあろまの体が更に寄ったと思うと、ほんの一瞬唇と唇が触れ合うだけの軽い軽いキスをされた。
突然のことに身構えた瞬間にはもうあろまは離れていて、何事もなかったかのように運転席のドアを開けていた。
慌てて私もドアを開けて車から降りる。
「じゃ、朝準備できたらうち来いよ」
「ちょ、ちょっと待って、あろま、」
「なによ」
あろまのシャツを掴んで、顔を上げてあろまの目を見る。
「誕生日、おめでと……！」
いつの間にか回っていた日付。
おめでとうを誰よりも早く、一番に言いたかったんだ。
あろまは少し固まったと思うと、両手で私の顔をそっと包んで、さっきより少しだけ長く唇を合わせてくれた。
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2020/8/32 Happy Birthday?
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せとか(プロフ) - 有馬さん» 前作に引き続きご愛顧いただきありがとうございます！あっためすぎてもはや煮詰まってしまったのではないかと心配になりますが可愛いと言っていただき嬉しいです。今後もよろしくお願いします。 (2020年9月16日 23時) (
レス) id: 05c1f5cb14 (このIDを非表示/違反報告)
有馬(プロフ) - 完結おめでとうございます！前作に引き続きとても楽しく読ませていただきました。今回もｷｭﾝｷｭﾝが止まらなかったです……6年も前からあっためていた作品…両者の歳の差や関係性に葛藤する二人が可愛かったです。素敵な作品をありがとうございました！ (2020年9月16日 22時) (レス) id: adf3e71480 (このIDを非表示/違反報告)
せとか(プロフ) - ﾊﾅﾋﾞｴ（碧鳴）さん» いつもコメありがとうございます！AN○は他の動画では見られない素敵な姿が見られますよね……私も見返してこよ 自作も引き続きよろしくお願いします。 (2020年9月5日 14時) (レス) id: 05c1f5cb14 (このIDを非表示/違反報告)
せとか(プロフ) - 時雨桜さん» 稚拙な文をお褒めいただき嬉しいです。ラストは自分でも唐突にぶっこみすぎか？と思ったもののその場の勢いと趣味を優先させました。趣味全開の文を最後までお読みいただきありがとうございます！ (2020年9月5日 14時) (レス) id: 05c1f5cb14 (このIDを非表示/違反報告)
ﾊﾅﾋﾞｴ（碧鳴）(プロフ) - 完結おめでとう御座います 更新され読むたび奇声をあげながら読んでました‥せとかさんの作品がほんま好きすぎる‥故に‥悲しいけれど‥次の作品も待ってますゆっくりと。久々に夢でキュンキュンさせられました‥AN○wの回たまたま最近見返したから‥びっくりしました (2020年9月5日 0時) (レス) id: e2ccf18f81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せとか | 作成日時：2020年8月23日 19時
