10. 7年前-3 ページ10
「昔も花火やったよな」
あろまはしゃがんで線香花火を落とさないようにジッとしながら口を開いた。
「うん、やったね。まだ幼稚園のときかな?」
「あのときはお前ジッとしてらんなくて、すーぐ線香花火落としちゃって泣いてた」
「泣いてないよ!」
抗議の意を込めてしゃがんだまま詰め寄ると、その衝撃で二人共線香花火の火が落ちた。
「あっ、おい、落ちただろ!」
「あ……、大丈夫、まだあるからもっとやろ!」
2本目の線香花火を取り出し、火を点けてもらって体を固くする。
今度はどちらも無言のまま火花を眺め、花が大きくなっていく様子を見つめた。
この火が、あろまより長く持ったら――
「あ」
声につられてあろまの手元を見る。
細い手に持たれた花火は火が消えて沈黙してしまっていた。
「あーあ、落ちちゃった」
あろまは立ち上がって火の消えた花火をバケツに落とし、新しい花火を持って元の位置にしゃがむ。
私の火は、まだ続いている。
「……私の方が、長く続いたね」
「ん?おー、そうだな」
「昔みたいにすぐ落とさなくなった。もう子供じゃないよ、あろま」
不思議そうにこちらを見るあろまのシャツの袖を掴む。
「あろま、私、あろまのことが好き。小さい頃から、ずっと。でももうあのときみたいに子供じゃないよっ……!」
言うにつれて、声が大きく、涙声になっていくのが自分でもわかった。
泣いてはいけない。
ここで涙を零したら、ちっちゃな子供のAに逆戻りだ。
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せとか(プロフ) - 碧鳴さん» 碧鳴さん前作に引き続き今作も読んでいただきありがとうございます。前作に増して特殊設定ですが楽しんでいただけると幸いです。 (2020年7月10日 13時) (レス) id: 05c1f5cb14 (このIDを非表示/違反報告)
碧鳴(プロフ) - 新作…!!続き楽しみにしております (2020年7月10日 10時) (レス) id: e2ccf18f81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せとか | 作成日時:2020年7月8日 18時