検索窓
今日:17 hit、昨日:17 hit、合計:35,647 hit

10. 7年前-3 ページ10

「昔も花火やったよな」

あろまはしゃがんで線香花火を落とさないようにジッとしながら口を開いた。

「うん、やったね。まだ幼稚園のときかな?」
「あのときはお前ジッとしてらんなくて、すーぐ線香花火落としちゃって泣いてた」
「泣いてないよ!」

抗議の意を込めてしゃがんだまま詰め寄ると、その衝撃で二人共線香花火の火が落ちた。

「あっ、おい、落ちただろ!」
「あ……、大丈夫、まだあるからもっとやろ!」

2本目の線香花火を取り出し、火を点けてもらって体を固くする。
今度はどちらも無言のまま火花を眺め、花が大きくなっていく様子を見つめた。

この火が、あろまより長く持ったら――

「あ」

声につられてあろまの手元を見る。
細い手に持たれた花火は火が消えて沈黙してしまっていた。

「あーあ、落ちちゃった」

あろまは立ち上がって火の消えた花火をバケツに落とし、新しい花火を持って元の位置にしゃがむ。

私の火は、まだ続いている。


「……私の方が、長く続いたね」
「ん?おー、そうだな」
「昔みたいにすぐ落とさなくなった。もう子供じゃないよ、あろま」

不思議そうにこちらを見るあろまのシャツの袖を掴む。

「あろま、私、あろまのことが好き。小さい頃から、ずっと。でももうあのときみたいに子供じゃないよっ……!」

言うにつれて、声が大きく、涙声になっていくのが自分でもわかった。
泣いてはいけない。
ここで涙を零したら、ちっちゃな子供のAに逆戻りだ。

11. 7年前-4→←9. 7年前-2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (33 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
67人がお気に入り
設定タグ:実況者 , MSSP , あろま
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

せとか(プロフ) - 碧鳴さん» 碧鳴さん前作に引き続き今作も読んでいただきありがとうございます。前作に増して特殊設定ですが楽しんでいただけると幸いです。 (2020年7月10日 13時) (レス) id: 05c1f5cb14 (このIDを非表示/違反報告)
碧鳴(プロフ) - 新作…!!続き楽しみにしております (2020年7月10日 10時) (レス) id: e2ccf18f81 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:せとか | 作成日時:2020年7月8日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。