8. 7年前 12さい (a視点) ページ8
7年前。
宣言した通り、盆休みに帰省した俺は手土産を持って隣の家のピンポンを押した。
はーい、と返事をしながらドアを開けたAは、去年見たときよりも一層背が伸びていた。
「あ!あろま!久しぶり!」
「おう」
なんともないように返したが、内心驚いていた。
去年帰省した際にはまだあろま"お兄ちゃん"と呼んでいたように思う。
自分の歳から数えると、Aは中1になった頃。
中学生になって、"お兄ちゃん"を卒業してしまったのだろうか。
そんなことを考えながら家にあがると、Aは俺の手にぶら下がる紙袋を覗くように体を傾けた。
「何持ってるの?」
「ん?いーもの」
ゴソゴソと袋を漁って中のパッケージを取り出して見せる。
「花火」
「やる!!!」
Aはパッケージを手に取り、踊りだすような足取りで家の奥の方へと進んでいく。
その様子を眺めていると、まだまだ子供であることに安心する。
どんなに背が伸びても、顔つきが大人びいてきていても、お兄ちゃんを卒業していても。
こいつはまだガキだ。
もてなされた麦茶を傾けながら、花火の説明をじっくり読むAを見る。
幼少期から見ていたこいつがあまりにも早く成長しているのを見ると、自分もどんどん歳を取っていくことに若干の焦りを覚えてしまう。
まあ、もう成人してるし社会人だし、歳なんてどうでもいいという気もするんだが。
「そうだ!」
Aは突然声を上げ、あろまちょっと待ってて!とバタバタとリビングを去っていく。
騒がしいやつ。
残された花火のパッケージを読んで待っていると、またしてもバタバタという音を立ててAが帰ってきた。
「見て見て!制服!」
「おー、いいじゃん」
なにかと思ったら、今年入ったばかりの中学の制服を着た状態でドアのところに立っていた。
まだ真新しく、サイズもぶかぶかでいかにも"1年生"の風貌だ。
「私の学年はリボン赤なの!かわいい?」
「かわいいかわいい」
なんかこの会話小学校入学のときもやったな。
やっぱりこいつは昔から変わっていない。
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せとか(プロフ) - 碧鳴さん» 碧鳴さん前作に引き続き今作も読んでいただきありがとうございます。前作に増して特殊設定ですが楽しんでいただけると幸いです。 (2020年7月10日 13時) (レス) id: 05c1f5cb14 (このIDを非表示/違反報告)
碧鳴(プロフ) - 新作…!!続き楽しみにしております (2020年7月10日 10時) (レス) id: e2ccf18f81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せとか | 作成日時:2020年7月8日 18時