48. 4日目-1 (a視点) ページ48
手元にある柔らかい感覚に体を寄せた。
顔をうずめて、息を吐く。
俺、こんなもの持って寝たっけ。
……意識がだんだん浮き上がってくる。
目を開いた瞬間は目の前にあるものがよくわからなかったが、次第にそれがこちらを向いて寝るAであることに気がついた。
ああ、そうだ。
昨日あいつらが来て、ソファを奪うもんだから俺はこれ幸いとAとベッドに入って。
……そこまでは覚えてるけど、こんなふうに抱きしめた記憶はないぞ。
でもまぁ、腕にすっぽりはまる感覚は気持ちいいので軽く抱き寄せて体をよりくっつける。
寝たままのAはコテン、と頭を俺の肩に寄せた。
あー、ちっさい、あったかい、やわらかい、気持いい。
かわいい、愛おしい、大事にしたい、離したくない。
ふわふわした意識の中で、鬼と呼ばれた俺には似つかわしくないような言葉が浮かんでくる。
もう一度寝よう。
この気持ちよさをまだまだ続けていたい。
「ああぁろまおっきろっ……ってきゃあああ!」
部屋に響くきっくんのハゲた声に顔をしかめる。
この時間を邪魔すんじゃねぇ。
声からAを守るように、ぎゅっと抱きしめた。
騒ぎで起きたのか、腕の中でAがもぞもぞと動く。
寝ぼけ眼を声のほうに向けるときっくんがわなわなと震えながら後ずさりをしている。
「うっせーな……」
「えふびぃぃ、あろ、あろまがあ、」
えー、なにぃ?とドアの向こうから声が聞こえる。
うるさい声がいなくなったのでもう一度寝るために布団に潜ろうとすると、体を軽く押される感触。
抗議の意を込めて下を見るとAが赤い顔で俺を見上げていた。
寝起きの目、ボサボサの髪、枕跡のついた顔。
どれもダサいはずなのに、かわいく見える。
あ、これちょっとヤバイかも。
「あ、あ、あろま、なに、してるのっ……」
「……てめーが寝てる間にくっついてきたんだろ」
嘘。というかホントはどうかはわからない。
ただそれはAも同様に知るところではないはずなので、適当に誤魔化しておけば騙されるだろ。
Aはズボッと抜け出してベッドから降りこちらを指差す。
「い、言っとくけど、夜中に抱きついてきたのはあろまが先だからねっ!私起きてたから!」
ぷりぷりと怒ったような顔をしながらAは部屋を出ていった。
残された俺はボスンと頭を枕に投げ出す。
あー、この下半身どうしよ。
67人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
せとか(プロフ) - 碧鳴さん» 碧鳴さん前作に引き続き今作も読んでいただきありがとうございます。前作に増して特殊設定ですが楽しんでいただけると幸いです。 (2020年7月10日 13時) (レス) id: 05c1f5cb14 (このIDを非表示/違反報告)
碧鳴(プロフ) - 新作…!!続き楽しみにしております (2020年7月10日 10時) (レス) id: e2ccf18f81 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:せとか | 作成日時:2020年7月8日 18時