5. 11年前 8さい ページ5
11年前。
「やーだーーーー!」
庭先にしゃがみこんで大号泣。
お母さんは困った顔をしているだろうし、あろまお兄ちゃんも呆れてため息をついている。
そのことにもっともっと悲しくなってしまって、止めようと思ってもどんどん涙が溢れてくる。
「お兄ちゃ、行っちゃ、やだーーーー」
そう。
今日は無事高校を卒業したあろまお兄ちゃんがお家を出て一人暮らしを始めてしまう日。
その話を聞いたときから悲しくて悲しくて何度も泣いてしまったし、ふてくされてお兄ちゃんを無視した日もあった。
そんなことをしても時が止まるはずもなく、とうとうお兄ちゃんがいなくなってしまう日を迎えたのだ。
ああ、こんなことなら、無視なんかせずにちゃんといっぱい遊んで置くんだった……
お兄ちゃんは私の前にしゃがみこんで、頭をなでてくれた。
「あのなあ、A。なにも東京とか遠くに行くわけじゃなくて、同じ市内だぞ。遊ぼうと思ったらいつでも遊べるからな」
「……毎日?」
「いや、毎日は無理。てかここ住んでても仕事あったら毎日は遊べねーよ」
お兄ちゃんの言葉に、うぇぇ、とまた嗚咽が漏れる。
今までだって、お互い学校もあるし毎日遊んでいたわけではないのだが、それは"いつでも遊べる"という前提があってのことだった。
「ま、せいぜい月1ぐらいだな。」
「月1……」
その言葉に絶望する。
そんなの、ないも同然だ。
「じゃ、そろそろ俺行かないと引っ越し業者来ちゃうから。またな、A。」
頭を優しく撫でてくれる手と、その言葉にまた感情が溢れ出し、顔をしゃがんだ膝に埋めて泣いてしまう。
おかげで、去っていくお兄ちゃんの背中は見えなかった。
この後、お兄ちゃんは宣言通り月1回程度のペースで帰ってきてくれたが、その度にまたお別れするのが辛すぎて、私は次第にお兄ちゃんと遊ばなくなった。
ほぼ同時にお兄ちゃんも仕事が忙しくなったのか帰ってくる頻度が少なくなり、こうして私のお兄ちゃんべったりな日々は一旦幕を閉じた。
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せとか(プロフ) - 碧鳴さん» 碧鳴さん前作に引き続き今作も読んでいただきありがとうございます。前作に増して特殊設定ですが楽しんでいただけると幸いです。 (2020年7月10日 13時) (レス) id: 05c1f5cb14 (このIDを非表示/違反報告)
碧鳴(プロフ) - 新作…!!続き楽しみにしております (2020年7月10日 10時) (レス) id: e2ccf18f81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せとか | 作成日時:2020年7月8日 18時