36. 2日目 (a視点) ページ36
「……なんか酷い顔してっけど、どしたん」
きっくんにそう言われるほどなのか、今の俺は。
昨日はあの後当然飯に行く気にもなれず、あり物のカップ麺やらなんやらで適当に済ませて早々に寝た。
Aには本を見てていいと伝えたが、結局どうしたのかは知らない。
朝、予定は入ってないのにとりあえず外へ出て、きっくんを呼び出してカフェに集合して今に至る。
正直なぜこの男を呼びつけたのかわからない。
でも魔法使いのFBは論外として、ぼんやりクソジジイのえおえおにこの感情をうまく説明できるとも思えなかった。
それに、こいつなら。
「……きっくん前に活動のこと知った女に振られてたよな」
「え?なに?俺の傷抉る会?帰っていい?」
そう言いながらも、向かいの席にちゃんと座ってくれる。
そう、こいつなら"活動内"と"活動外"をきっかけに女とひと悶着あった経験がある。
話すことで理由のない苛立ちが解決するかもしれない。
わからなくても、まあイライラの捌け口ぐらいにはなるだろう。
コーヒーを注文してから来るまで特に話は続けず、ウェイトレスが来てカップを置き去っていくのを見届ける。
その間、目の前の男の普段の騒がしさは鳴りを潜め、じっと俺から話すのを待っていた。
活動のことを知られたときのとっさの自分の中の感情や、Aのあろまほっとを見る目に怒りを覚えたことから、普段の自分ではなく般若の自分を見ていることが苛立ちの原因なのだと思っていた。
だが、同時に般若の自分とそうでない自分はひっくるめて俺だとも思っている。
そもそも般若の俺は特にキャラを作っているわけでもない。
だからそこを同一視しないのも不自然だろう。
感情まで交えて、きっくんにぶちまけるように事の顛末を話す。
相手の素性についてはあまり多くは言わなかったが、きっくんは既にわかっていたように「昨日言ってた子?」とだけ確認した。
全部吐き出してから、きっくんはムカつく顔でこっちを見て口を開く。
「あろまはちゃんと見てほしかったんだね、自分のこと」
「……いや俺の話聞いてたのかよハゲ」
全部ひっくるめて俺だって話したばっかだろうが。
そういうと、きっくんは口をニヤ、とさせて続ける。
「そうじゃなくて。その子に対してはあろまはずっと"お兄ちゃん"だったわけでしょ?だから、お兄ちゃんじゃない自分を見られたのが不満だったんじゃないの。あろまの顔の二面性は活動内と活動外じゃなくって、"お兄ちゃん"と"それ以外"」
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せとか(プロフ) - 碧鳴さん» 碧鳴さん前作に引き続き今作も読んでいただきありがとうございます。前作に増して特殊設定ですが楽しんでいただけると幸いです。 (2020年7月10日 13時) (レス) id: 05c1f5cb14 (このIDを非表示/違反報告)
碧鳴(プロフ) - 新作…!!続き楽しみにしております (2020年7月10日 10時) (レス) id: e2ccf18f81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せとか | 作成日時:2020年7月8日 18時