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30. 1日目 ページ30

「はあ?」

……そんな怪訝そうな顔をしなくてもいいじゃないか。

適当に乾かし終わった髪を少しくしゃくしゃとかき混ぜて、ドライヤーのコードを巻き取りながらあろまは言葉を続ける。

「なんでよ、彼女とかいねーわ」

あれ。いないんだ。
予想外の答えに思わずあろまのほうへ振り返る。

「そのドライヤー、いいやつみたいだから」
「あーこれ……そういうのにうるさい友達が新しいの買ったからっつってくれた」

その友達って、女の人?
ドライヤーをあげるって、そうとう仲いいんじゃないだろうか。
彼女がいないということがはっきりわかったのは良かったけど、なんとなくモヤモヤする。

「あ」

あろまがふいに声をあげる。
不思議に思ってあろまを見上げると、ドライヤーを置いたあろまは「なんかあったかな」と冷蔵庫を開ける。

「ああ、これでいいべ。A、ちょっとテーブルんとこ座れ」

言われたとおりに、ソファから降りてテーブルにつく。
一人暮らしの割には家具が充実してる家だ。
テーブルに添えられた椅子が2個あることさえ、彼女がいないと言われていなければ邪推してしまうだろう。

後ろ手に何かを持ったあろまはちょっとニヤニヤしながら台所から出てきた。

「ほい、これ」

目の前に置かれたのは。

「……プリン?」
「誕生日おめでと」

あろまは向かいの席に座ってニッと笑う。

時計にバッと目をやると、いつの間にか時計は12時を過ぎて日付が変わっている。

私の"10代"は終わり、そして――

……ここに来て、数時間あろまと一緒に過ごして、その楽しさにここまで来た目的を忘れるところだった。

貰ったプリンをそっと開けて、薄い黄色の表面を見つめる。

「……あろま、私20歳になったよ」
「おお。なんだ?酒でも飲むか?今多分ねーぞ」
「ううん、お酒はいらない。でもね、私10代が終わって20代になったの」
「そーだな」
「あろまはまだ誕生日来てないから29だね」
「おお」

ふぅ、と息を吐いて速る心を落ち着かせようとするが、もう止められない。
顔を上げて、あろまの顔を、目を、しっかり見る。

「あろまも私も同じ20代、これで同年代って認めてくれるっ……?」


例え笑われても、私は本気だ。

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せとか(プロフ) - 碧鳴さん» 碧鳴さん前作に引き続き今作も読んでいただきありがとうございます。前作に増して特殊設定ですが楽しんでいただけると幸いです。 (2020年7月10日 13時) (レス) id: 05c1f5cb14 (このIDを非表示/違反報告)
碧鳴(プロフ) - 新作…!!続き楽しみにしております (2020年7月10日 10時) (レス) id: e2ccf18f81 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:せとか | 作成日時:2020年7月8日 18時

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