17. 3年前-6 ページ17
「お熱いこって」
赤崎と別れ、門を開けて庭に入ったところで塀の向こう側から声をかけられた。
顔を向けなくてもわかるあろまの声にドキリとする。
「……冷めてるよ、たった今別れ話したんだから」
「そうみてーだな」
声の方に体を向けると、あろまは家の境界にある低い塀の上に腕を組んで寄りかかっていた。
第一声からして話していた内容は聞こえなかったのかと思いきや、そうでもなかったらしい。
どこまで聞こえていたのか聞く勇気はなかった。
「あろま、最近よく来るね。なんかあるの？」
「いや、置きっぱのゲーム取りに来てるだけ。ついでに庭の草むしってけって言われたからこーして頑張ってるわけですよ」
あろまは右手に持った泥だらけの軍手をひら、と見せて塀から離れた。
「ま、それも終わったから帰るけど。じゃーな」
「……あろま、」
とっさに呼び止めたものの、続く言葉は出ない。
怪訝そうな視線に耐えかねてなんとか口を開く。
「……私、さっきお試しで付き合ってた人と別れたの」
「おー、知ってるよ。何？慰めてほしいわけ？」
あろまは私の頭の高さの辺りで手を水平に振った。
塀越しにエアなでなでをしてるつもりらしい。
「あろまに振られたの、忘れられるかなって思って…… でも、無理だった」
「A、」
あろまが再度塀に近寄る。
私も一歩近づいて、手を伸ばせばお互いが触れる距離だ。
「お前が昔から言ってることが本気なら、お前は10年以上前から俺のこと好きなんだろ。そんな10年の片思いを1ヶ月足らずで忘れられたら世の中苦労しねーべや」
俺が言うのも変だけど、と言って伸ばした手が私の頭を軽くポンポンと叩く。
その優しさにあの日我慢した涙がこぼれてしまいそうで、必死に上を向く。
ポンポンという音よりむしろペチペチという擬音のほうが適していそうな叩き方をし始めた手を取って少し握った。
あろまは握り返すようなことはしない。
「あろま、ありがと。もう帰るんでしょ？呼び止めてごめんね」
「……おお。じゃ、またな」
私はあろまの姿が見えなくなるまで見送ってから玄関に入って、また少し涙を零した。
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せとか(プロフ) - 碧鳴さん» 碧鳴さん前作に引き続き今作も読んでいただきありがとうございます。前作に増して特殊設定ですが楽しんでいただけると幸いです。 (2020年7月10日 13時) (
レス) id: 05c1f5cb14 (このIDを非表示/違反報告)
碧鳴(プロフ) - 新作…！！続き楽しみにしております (2020年7月10日 10時) (レス) id: e2ccf18f81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せとか | 作成日時：2020年7月8日 18時
