13. 3年前-2 (a視点) ページ13
「じゃ、ここで」
「……うん。あろま、」
どうでもいいことを話しているうちに駅に着き、さらっと別れの挨拶を告げるとAは今まで以上に大人びた顔で俺を呼び止めた。
「……私、もう高2なんだ」
「おー、でかくなったな」
「初めて会ったときのあろまより大きいんだよ」
嫌な予感がして返事ができない。
「もう、法律上は結婚できる歳なの」
Aの言葉がどこへ向かっているのかわかってしまう。
「あろま、昔言ったよね。でかくなったらもっかい聞けって。だから今聞くよ」
「A、」
「あろま、大好き。昔からずっと好き。私と結婚を前提にお付き合いしてくれる?」
「……お付き合いを挟もうとするあたり成長したな」
「からかわないで。本気だよ」
Aの目は真剣そのものだ。
俺はこいつの人生を狂わせているのではないだろうか。
高校生なんて一番楽しいはずの時期に、10も離れた俺に向かってこんなことを言わせている。
何も言わない俺にAは続ける。
「……やっぱり駄目?」
「……ああ」
「16歳はまだ子供?」
「……お前がいくつになっても、俺はきっと同じことを言うよ。わりぃけど、諦めろ」
「……そっか」
ずっとこちらを見ていた目が初めて下を向いて逸らされる。
昔のように涙をこぼすことはしないが、その全身から悲しみが溢れているのは感じ取れた。
「お前なら同年代でいくらでもいいやついるだろ」
「まぁね!そこそこモテるよ、私!」
パッと顔を上げて明るい声を出しているが、語尾は少し震えていた。
「……あろまも、やっぱり同年代の人のほうがいい?」
「まぁ、そう、だな」
「……そうだよね」
うん、と小さくつぶやいてAはまた俺の顔を見る。
今までで一番の笑顔。
今までで一番の泣き顔。
両方を兼ね合わせた一番きれいな顔だと思った。
「ありがとう、あろま。またね」
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せとか(プロフ) - 碧鳴さん» 碧鳴さん前作に引き続き今作も読んでいただきありがとうございます。前作に増して特殊設定ですが楽しんでいただけると幸いです。 (2020年7月10日 13時) (レス) id: 05c1f5cb14 (このIDを非表示/違反報告)
碧鳴(プロフ) - 新作…!!続き楽しみにしております (2020年7月10日 10時) (レス) id: e2ccf18f81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せとか | 作成日時:2020年7月8日 18時