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花火の夜     其ノ参拾弐 ページ41

「今日、花火が上がるんだって!」

「そうなの?早く済ませよー!」

Aの部屋の前を、遊女たちが通った。

(そっか・・・。今日は花火が上がるって言ってた)


Aが部屋の襖を開けると、鯉夏花魁が通った。

「鯉夏さん、仕事ですか?」

「ええ。本当はAちゃんと見たかったのだけど・・・。

 相手の方と見るとするわ」

「一緒に見る人がいるだけで、いいじゃないですか。行ってらっしゃい!」

鯉夏は微笑んで通り過ぎた。


(相手の方、か・・・)

Aは黙って空を見つめた。

「今頃、錆兎が生きていたら、どんな男になってたんだろう。

 きっと、目をみはるような美男に・・・」

花火を見ながら寄り添う姿を想像し、Aはふっと微笑んだ。


「ねぇねぇ、Aさん!」

「一緒に花火見ようよ!」

すると、二人の禿、(かむろ。遊女見習いの子供)はなときくが顔を出した。

「そうね。じゃあ、行こうか」

「やった!あのね、とっても見やすい所があるの」

「ついてきて!」

二人に引っ張られ、Aは廊下を駆け出した。


しばらくして、花街に大きな花火が打ち上がり始めた。

「たーまや〜!」

行き交う人々は足を止め、空に咲く大輪の花を見つめた。

「すご〜い!」

「綺麗・・・!」

Aの方も、禿たちと共に、二階の空き部屋で見ていた。

(私も、こうやって錆兎や義勇と笑い合ってたな)

はしゃぐ子供の姿を見て、Aは昔の自分を思い出した。


街が歓声に包まれた・・・その時だった。


「ひ、人が死んでるぞ!」

あちこちで悲鳴がきこえ、Aは身をのり出した。

そこには、血溜まりの中に横たわる遊女の姿があった。

「あれは、京極屋の・・・」

禿たちは震えながら泣いていた。

「誰がこんなことを・・・」

Aが辺りを見回した時、


「・・・!」


屋根の上に人影を見つけた。

長い髪、無数の長い帯・・・。

強い気配を感じた。

(あれは、鬼だ・・・!)

Aは振り返り、禿たちの肩に手を置いた。

「危ないから、みんなと一緒にいてね。・・・大丈夫。すぐ戻るから」

禿たちが頷いたのを確認し、Aは暗い空へと飛び出した。

上弦の陸、堕姫  其ノ参拾参→←帰って参りました!!



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レベ - 占ツクの作品で感動したのこの作品が初めて!錆兎と結衣←(わたしの夢主の名前です)来世とかキメツ学園とかで結ばれますように……!! (2022年11月16日 15時) (レス) @page24 id: ea3111d08d (このIDを非表示/違反報告)
組紐屋の夜桜 - ゆりさん、コメありがとうございます!ぜひ!落ち着いたら見てみますね。 (2022年3月3日 23時) (レス) id: 89f56691f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - 組紐屋の夜桜さん、良かったら私の作品を見てみてください。 (2022年2月28日 17時) (レス) @page3 id: b7d6d649b3 (このIDを非表示/違反報告)
組紐屋の夜桜 - ありがとうございます!励みになります! (2021年10月8日 21時) (レス) id: 89f56691f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - そうですね😃頑張ってください。応募していますね😃 (2021年10月6日 23時) (レス) @page3 id: b7d6d649b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:組紐屋の夜桜 | 作成日時:2021年8月27日 22時

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