隠の少女 其ノ弐拾漆 ページ33
それから数日後・・・。
Aは吹き抜ける風を感じながら、手紙を書いていた。
送る相手は幼い頃に別れた妹、心夏(こなつ)だ。
親と離れて暮らしている心夏とは、こうやって手紙でやり取りしている。
しかし、住んでいる場所は、手紙を届けてくれる鎹鴉の時雨しか知らなかった。
「さて・・・。今日はなんて書こうかな」
何を書こうか迷っていたその時。
「すみません。市川様いらっしゃいますでしょうか?」
戸の向こうで声がした。
「どうぞ!庭に来てください」
失礼します、と庭に歩いてきたのは、隠だった。
「あなたは、那田蜘蛛山の時の」
「はい。あの時はありがとうございました」
「そこに座って!今、お茶入れるから」
Aは湯のみにお茶を入れ、縁側に座った少女に持って行った。
「あなた、名前はなんていうの?」
「・・・なつ、といいます。今年で十七になります」
「なつ、ちゃんか。ぴったりな名前ね」
なつは照れたように下を向いたが、ふと部屋の机を見た。
「すみません!お取り込み中、」
「あ、いいのよ。・・・何書こうか迷っていたし」
Aは遠くを見た。
「生き別れた妹に書いているの。心夏といってね、ちょうどあなたと同じ歳なの。・・・でも、お互い会うのはきまずくて。
私は心夏をかばって、親に捨てられたから・・・」
「そうですか・・・」
沈黙が続いたが、心夏が口を開いた。
「市川様、」
「Aでいいわ」
「・・・A様を、姉のように慕ってもよろしいですか?」
Aは目を見開いた。
なつの透き通った目は、妹を守ると決めた昔の自分にどこか似ていた。
「・・・じゃあ私も、なつを妹のように慕うね」
「あ、ありがとうございます!」
なつは驚いたような、嬉しそうな顔で頭を下げた。
ーーAは俺が守ってみせる
Aの脳裏に、笑いかけた錆兎が浮かんだ。
(今度こそ大切な人を失わない。・・・この手で私が守ってみせる)
ふとなつと目が合い、二人は微笑み合った。
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レベ - 占ツクの作品で感動したのこの作品が初めて!錆兎と結衣←(わたしの夢主の名前です)来世とかキメツ学園とかで結ばれますように……!! (2022年11月16日 15時) (レス) @page24 id: ea3111d08d (このIDを非表示/違反報告)
組紐屋の夜桜 - ゆりさん、コメありがとうございます!ぜひ!落ち着いたら見てみますね。 (2022年3月3日 23時) (レス) id: 89f56691f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - 組紐屋の夜桜さん、良かったら私の作品を見てみてください。 (2022年2月28日 17時) (レス) @page3 id: b7d6d649b3 (このIDを非表示/違反報告)
組紐屋の夜桜 - ありがとうございます!励みになります! (2021年10月8日 21時) (レス) id: 89f56691f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - そうですね😃頑張ってください。応募していますね😃 (2021年10月6日 23時) (レス) @page3 id: b7d6d649b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:組紐屋の夜桜 | 作成日時:2021年8月27日 22時