離れないで 其ノ拾漆 ページ21
(もう、駄目だ・・・)
手鬼の方へ落ちていくAは、諦めて目を瞑った。
ーーだが、いつまで待っても喰われることはなかった。
「しっかりしろ!」
聞き覚えのある声で、Aはっと目を開けた。
そこには狐の面があり・・・
「錆、兎・・・!」
そう、落とされる前に錆兎が現れ、Aを抱きとめたのだ。
錆兎はAを横抱きにしながら手をかわし、木の陰へとゆっくりおろした。
「良かった。喰われる前に気づいて」
「ありがとう、錆兎・・・」
錆兎は懐から一枚の布を取り出し、Aの頭に巻いた。
「このまま戦うのは危険だ。・・・A、お前は安全なところへ行け」
「そんな・・・!私はまだ戦える!それに錆兎を一人にするなんて・・・!」
と、言葉を塞ぐかのように、錆兎は自身の唇をAに重ねた。
それがほんの一瞬でも、Aは黙ることができた。
「俺はAが死んでしまう方が辛い。言っただろ?お前を守るって」
錆兎はそっとAを引き寄せ、抱きしめた。
「俺は生きるかもしれない。死ぬかもしれない。
・・・どっちに転んでも、お前だけは生き延びろ」
「・・・っ。錆兎・・・」
Aは涙を流しながら錆兎にしがみつき、錆兎もそんな彼女を強く抱きしめた。
「なるほど・・・。お前たち、そういう仲だったんだなァ」
遠くで見ていた手鬼が近づいてきた。
錆兎はAの前に手を広げた。
「A、行け!」
「・・・うん!」
Aは頷くと、錆兎から離れ、歩き出した。
「お前の相手はこっちだ!」
錆兎は刀を構えた。
「水の呼吸、肆ノ型。打ち潮!」
刀の音が響き渡り、Aは少し離れたところで振り向いた。
数多の手を避け続け、見たことのない速さで鬼の頸を狙う錆兎。
一太刀も、とても強かった。
(このガキ・・・。今までと比べ物にならないぐらい強い・・・!)
そして、とうとう手鬼の頸へ刀を振り下ろす。
(斬れる・・・!)
そう思った刹那、
ーーカキン!
頸に入れた錆兎の刃が、真っ二つに折れたのだ。
(嫌な予感がする・・・!このままじゃ・・・!)
Aは錆兎のもとへ走って叫んだ。
「錆兎!!戻って来て!・・・私を一人にしないで!!」
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レベ - 占ツクの作品で感動したのこの作品が初めて!錆兎と結衣←(わたしの夢主の名前です)来世とかキメツ学園とかで結ばれますように……!! (2022年11月16日 15時) (レス) @page24 id: ea3111d08d (このIDを非表示/違反報告)
組紐屋の夜桜 - ゆりさん、コメありがとうございます!ぜひ!落ち着いたら見てみますね。 (2022年3月3日 23時) (レス) id: 89f56691f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - 組紐屋の夜桜さん、良かったら私の作品を見てみてください。 (2022年2月28日 17時) (レス) @page3 id: b7d6d649b3 (このIDを非表示/違反報告)
組紐屋の夜桜 - ありがとうございます!励みになります! (2021年10月8日 21時) (レス) id: 89f56691f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - そうですね😃頑張ってください。応募していますね😃 (2021年10月6日 23時) (レス) @page3 id: b7d6d649b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:組紐屋の夜桜 | 作成日時:2021年8月27日 22時