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後夜祭の日は、朝から綺麗な秋空が広がっていた。
生徒達は片付けに精を出していて、オレがギターを背負って学校に来たのを目撃した奴らに「すだちー！？」って騒がれたりした午前中。
数年前から、何故か『後夜祭を好きな相手と過ごせたら幸せになれる』なんてゆーありがちなジンクスがうちの学校にも突然広がって
ここ最近、後夜祭はモジモジしてる男女の生徒をよく見る。
午後になり、大野さんがふらりと職員室に入って来て、その場にいた教師陣が沸き立った。
「大野先生！今年も会えて嬉しいですー！」
「こないだは、お店でありがとうございましたぁ」
「いつでも復職して下さいよ！」
生徒だけじゃなくて、仕事仲間からも好かれてた人だ。
あっとゆーまに囲まれてる。
「先生って呼ばれるの、なんか恥ずかしい」
アハァ、って緩く笑った大野さんを見て今年入ってきた新任の若い女の子先生が「可愛い...」ってウットリしてる。
ほらまた、そーやって簡単に人を誑し込むんだから。
「大野さん、ちょっと一回合わせとこーよ」
囲まれてる大野さんに声を掛けると、彼は「うん」って笑ってこっちに来た。
「音楽室使って良いって言われてるから、そこで合わそ。防音バッチリだし」
「極秘プロジェクトだからね！」
「あ、一部の生徒にはバレた」
「もう何してんのー」
何だか楽しそうな大野さんと音楽室に向かう。
やっぱり廊下で生徒達に見付かって「すだちー！」と騒がれた。
最終の音合わせをして、ついでに衣装に着替えて、外に出る。
「うわ...すっげぇ月...」
空を見上げると、少し怖くなる程に大きな月が浮かんでた。
「ホントだ。大きいね」
「.....」
「あんなに大きかったら地球のどこからでも見えそう」
「日本の裏側では見れないですよ」
「例え話なんですけどぉ」
...どこからでも、ね。
ねぇ、キミもどこかでこの月を見ていたりするの？
同じ月を、見ていたりするの？
「ニノ、行くよ？」
「あ...うん」
学ランとサングラスなんて、フザけた衣装でステージに上がる。
大野さんが歌う。
「僕の苦手なミルクティーを好きな君を、僕が好きになるのはきっと許されなくて
一緒に見た夜桜も大輪の花火も、季節が変わったって忘れられないでいる」
サングラス越しに見たでっかい月は、真っ白で
やっぱりオレの世界に色なんか無くて。
真っ黒な夜にギターを鳴かせながら
もうキミの事を想いながら歌うのは今日でやめようと、決めた。
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2017年1月18日 21時
