色恋戦線 2nd【ars K.N】 (ページ7)

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「でもさ、教え子って言ってももう卒業してんだし問題無いでしょ？」
「だけど10歳年離れてんのは変わんないよ」
「それはそうだけど...」
「同年代の彼氏だったら出来る事を、オレは出来ないかもしんない」

既にもう、20代と30代で世代が違うんだ。

「20代だからこそ！って遊びもあるじゃん。オレ、もうクラブでオールとかしんどくて無理だもん」

タハッ、と笑うと大野さんも「おれも眠くなる」なんて言うから「お前は年中眠いだろ」ってまた笑う。

「それにさ...アイツはまだきっと男を知らないのよ。オレが初めてになっちゃうワケ」
「...怖い？」
「怖い、よね。オレが汚してしまうのか？って思ったら、怖くなった」

また、大野さんの相槌が無くなった。

「男の方が女より寿命が短いの知ってる？」
「...それがどうしたの」
「オレはいつか彼女を一人ぼっちにしてしまう」
「......」
「毒入りスープで一緒に逝こうなんて、言えるはず無いでしょ？」

息を吐き出すと、自分が思ってたよりも大きな溜息になった。

「言い訳だね」
「え？」
「そんなの全部、言い訳だよ。そりゃおれ達オッサンにクラブでオールしろってのは酷だけどさ。逆に若造には出来ない事があるでしょ」
「......」
「自分が汚してしまうってのもさぁ、初めてが好きな人でその人の色に染められるなら嬉しいに決まってない？女の子の夢なんじゃないの？そんなの」

大野さんの声が、どんどん大きくなって来る。

「それからっ！寿命って何！ニノ、今いくつなの！おれより年下でしょうが！」
「え、あ、いや...」
「ニノは今生きてんのに、何で死ぬ時のコト考えてんの！？目の前の幸せを考えたらどうなの！」

怒鳴られた。
怒鳴り慣れてない大野さんは、電話の向こうでゲホォゲホォと噎せてる。

「...ごめん。でも、もう決めたから」
「......」
「アイツの為とか思ってたけど、オレの為なんだろうね。自分勝手だけど」

逃げただけなのかもしれない。
現実に、ビビっただけなのかもしれない。

あれだけ突き放したんだから、もう後戻りなんて出来ない。

「だったら、せめてこのタイトルはやめて」
「え？」
「『無彩色』なんて、悲し過ぎる」

『ミルクティー』だったタイトルを、歌詞と同時に『無彩色』に変えたのは

あの夜から、オレがモノクロの世界に落ちてしまったから。

「『ミルクティー』に戻してくんなきゃ、歌わない」
「...分かったよ」

大野さんが「バカだね」と、小さく笑った。