色恋戦線 2nd【ars K.N】 (ページ26)

今日:3 hit、昨日:7 hit、合計:1,601,060 hit

５６ページ26

「ここが、オレの本棚...ってゆーか、何か物置みたいになってるけど」

もう自分では何度も入ってるし、何でも無い部屋だけど。

「自分ちだけじゃどうしても置ききれなくて。この部屋使ってないの知ってたから、ばーちゃんに頼んで貸して貰ってんの」
「間借りですか」
「フハハッ！タダで使ってるから単なる孫のワガママ」
「フフッ」

一番古い本が並んでる棚を見て、そろそろ捨てる本の分類もした方が良いな...なんて別に今考えなくても良い事を考えてしまったのはやっぱり思ってる以上に緊張してるからか。

「この辺は高校の頃に読んでたヤツかなー...」
「あ、漫画もある」
「そりゃあねぇ。漫画も立派な日本文化だから」
「相葉くんがお店に来て漫画の話した時は呆れてたのに」
「何、お前。盗み聞きしてたの？」

そんな風にいつもオレを見てたような事をサラリと言うとか。
なかなかの爆弾娘かもしれない。

「先生、あっちも見て良いですか？」
「んー、お好きなだけ」

結城は本棚を上から下までジックリ見て、たまにブツブツ言ってる。
下の方の本は、しゃがみ込んでまで眺めてる。

「面白い？」
「あっ...」

あまりにも熱中してるから、隣にしゃがんで訊いてみた。
本屋と何が違うんだ？

「はい。先生がどんな本好きなのか分かって、面白い...ってゆーか...」
「うん？」
「...何だか、幸せです」
「......」
「ここは、私にとってはディズニーランドに匹敵します」

......ほら、この爆弾娘は容赦しない。
ちょっと恥ずかしい位、心臓が早打ちになって息を吐き出すように笑った。

「じゃあ、オレはミッキー？」
「えー...ちょっと違う」
「ンフフ、何でよ」
「先生は『美女と野獣』のベルかな。読書好きだし」
「お姫様でしょ、それ」

何か言おうとした結城の頬に触れると、息をヒュ...っと吸い込んでオレを見上げる。

今、オレの目の前に居るのは

「ベルは読書好きなの？」
「...はい...」
「じゃあ、それ結城」

読書好きな、お姫様。

「でもオレ、野獣は嫌だな」
「......最後は王子様に戻ります...」
「だったら良いか」

オレがお前の王子様になるなんて、メルヘン過ぎて言えないけど。

「参った」

彼女の額に、コツンと額を寄せた。

「言わせたかったんだよな？」
「......」

近すぎて見えないけど、キミが瞬きをする気配を感じた。

「降伏するよ。参った」

柔らかいキミの頬を、キュっと抓って少し笑う。

マジで参ってるなって、笑う。