色恋戦線 2nd【ars K.N】 (ページ21)

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あきらかに彼は、失敗したって表情を見せた。
どうやら、嘘がつけないタイプらしい。

段ボールを持ったまま立ち尽くしてる加藤くんに近付くと、ペコリと頭を下げられた。

「あの...さ」
「...はい」
「君に訊くのは失礼かもしれないけど、...結城がどこに居るか知ってる？」
「......」

加藤くんは何も言わず、オレの目をジっと見てる。
意志の強そうな目だ。
彼が自分の生徒に居たら、きっと注目してたと思う。

「先生は、どーゆーつもりでAちゃんに会いに行くんですか？」

その強い目を変えないまま、加藤くんが言った。

下手な誤魔化しなんか、通用しない。それはすぐに理解した。

静かに息を吐き出すと、自分でも驚く程に自分の心が見えた。

「ずっと待たせてたから、迎えに行こうと思ってる」

言葉にすると、何て簡単な事だったんだろうと思う。
こんな、簡単な事にオレはどれだけ時間をかけてたんだろう。

加藤くんが、キュっと唇を噛んで視線を自分の持ってる段ボールに落とす。

「加藤くん」
「...はい」
「オレは君に謝らないといけない」
「......」
「君の承諾も得ずに結城に君の小説を読めって言ってしまった事、ずっと申し訳ないと思ってた」

もう一度オレを見た加藤くんに「君はあの想いを隠したかったのかもしれないのに、勝手な事をしてしまった」と頭を下げた。

「...そんなの別に良いですよ」
「......」
「本当は、知って欲しかった想いです」

誰かに恋をしたら、その想いを伝えたいし、知って欲しいし、出来ればその人の隣に居たくなるのは当然の気持ちだ。
加藤君が結城に対してそう思うのも当たり前で、だけどそれはオレも同じ事で。

「それからもうひとつ、謝っておきたい事があるんだ」
「まだ何か？」

少し反抗的な言い方に、カチンと来るどころか少し嬉しく感じたのは何故だろう。

「オレは君の恋路を邪魔する事になるかもしれない」
「もう充分お邪魔ですけど？」
「ごめん」

加藤くんが、本気で結城を好きだという事を知る。

「もし、僕がAちゃんを奪ってやるって言ったらどうしますか？」
「奪うも何も、まだ今の結城の気持ちをちゃんと聞いた訳じゃ無いから」
「じゃあAちゃんが俺を選んでたら？先生がフラれる事になったら、先生はどうするんですか？」

言われてみて、なるほどそうだなと思った。

離れてた時間で彼女の気持ちは変わってるかもしれない。
移ろい行くのが、人の気持ちなんだから。