色恋戦線 2nd【ars K.N】 (ページ2)

今日:6 hit、昨日:3 hit、合計:1,600,936 hit

３２ページ2

「新進気鋭の新人作家とか居ないかなぁ」

そろそろ、新しい作家を探すのも良いなぁと思った。

学生時代は片っ端から知らない名前の作家の本を読み漁ってた。
もちろん趣味じゃ無い作家も居たけど、中にはオレの分身か！？って位に肌に合う作家も見付けた。
最近は時間が無くて、なかなかあの宝探し気分は味わえないけど。

本屋で働いてる結城なら、一人くらい良い作家を知ってるんじゃないか？と思って、そう言ってみた。

でも、キミの反応は思ってたのとちょっと違って。

「新人作家...」

そう呟くと、レジに居る加藤くんを見た。

「えっ？」と、キョトンとした彼を見て、もしや？と思う。

「もしかして加藤くんって物書きなの？」
「あっ...ちょっと、先生待って！」

後ろからキミが何でか止めて来るけど、構わずレジカウンターに向かって「加藤くん、小説家志望？」と訊いてみた。

「はい、そうなんです」

彼はニッコリ笑って、気持ち良いくらいハッキリと応えた。
自分の夢を照れる事無くここまで言い切れるのは、夢を叶える為のひとつの素質だと思ってるから、彼のその夢に手が届きますようにと願う。
一種の職業病かも。

「加藤さんの小説、面白いんですよ！」
「よせやい！」

結城と加藤くんが、笑い合う。

「へー。読んでみたいな、オレも」
「僕の予定では来年辺り、そこに自分の本が並んでるはずなんですよねー」

加藤くんが新刊コーナーを指差して言うから、オレも「楽しみだな」って笑う。

「じゃあ今は公募とか？」
「はい、地道に」
「頑張ってんのね」

笑ってた彼が真剣な表情で頷いたから、何か一瞬進路指導してる気分になった。

「...あ！加藤さん！あの小説、公募に出す前に先生に読んで貰ったら良いのに！」
「え...？」
「誤字脱字の最終チェックしてくれますよ、国語の先生だから！」
「あー...ハハッ、でもそんなの悪いよー」

申し訳無さそうな顔で首を振る加藤くんだけど、読みたい本も無かったオレにしてみたらあの宝探し気分をまた味わえる機会だ。

「良いよ、それ位。ってか、オレも読んでみたいし」

校閲って程の事は出来ないけど、軽い添削くらいはできるし。

「...いや、でも...拙い話だから...」
「結城が面白いって言うんだから、センス良いと思うんだけどなぁ。だろ？」

結城を見ると、思いっきりブンブン頷いてる。

首がもげそうですよ。落ち着け。