裏切り小説はなぜ人気なのか

悪女とヒロインの矛盾と作者の自尊心 ページ5

悪女とヒロインの設定の差について。
　こちらも、コメントを頂いたのでお答えします。


　まずは、悪女とヒロインの設定を見てみましょう。
　よく見かける悪女の設定は、
・不細工
・ぶりっこ
・体重が重い(太っている)
・性格に裏表がある
など、一般的に人から嫌われる性格をしている事や、
容姿が優れていない事が多いです。

　対して、読者作者の分身たるヒロインは
・可愛い、または綺麗
・性格がいい、優しい
・痩せている、スタイルがいい
など、一般的に人から好かれ、
容姿も優れている事が多いです。



　ヒロインの設定は、
現実的ではないこともあります。

　コメントにあったように、
ヒロインの体重が異常に軽いことも珍しくありません。

　これは、
体重が軽い＝美しい、いいことである
という価値観の影響でしょう。


　本作の趣旨とは離れますが、すこし書かせて頂きます。

　痩せすぎていることは、決して素晴らしいことではありません。
　むしろ太りすぎと同じく、程度がひどければ健康を害します。そして、健康を害せば精神もまた、蝕まれます。
　どんな影響があるかは、ご自身で調べて下さい。
　一番大事なのは、健康であることです。



　さて、話を戻しましょう。

　これらの設定たちには、作者読者の自尊心が深く関わっています。

　自尊心とは、いわゆるプライド、ではなく、
自己肯定感としての意味です。

　自己肯定感とは、ありのままの自分を
生きていて価値のある人間だ、
かけがえのない存在だ、
と、思えることです。

自分を肯定する力。
自分で自分を愛する力。
自信、と言いかえても良いです。



　作者たちは、この自己肯定感が欠如していると予測できます。

　では自己肯定感が低いと、どのようなことが起こるか。


　まず自分で自分を誉めることが出来ないので、他人の価値観に振り回されます。

　また、他人からの評価を気にせずにはいられません。

　さらに、自分の存在に価値を見いだせないので、
他人を下げることで、自分の価値をあげようとします。

　そうでないと、自分を認められないからです。


　
　作者が悪女とヒロインの対比を行い、
読者がそれを好むのは
現実のの自分のかわりに、小説の中の自分(ヒロイン)を
実像からかけ離れた
他人から評価される素晴らしい人間にすることで、

またヒロインと悪女を対比させ、
つまり、相手を下げることで自分を上げて、

自信のなさを覆い隠そうとしているのでしょう。

　

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