"REASON"

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「プロ野球選手だって！！」

「まじ可愛い系なのに横暴すぎるわ、つきたくない」

「フルーツいらないって怒られたんだけどぉ、」

「うわ〜まじか中身も可愛かったら育てようと思ったのに」



少しずつこの仕事(キャバ嬢)に慣れてきて、ナンバーも店で5位や4位に入って看板の宣材にも写れるようになった頃だったと思う。少し遅れて出勤をした日、先輩たちがそんなことをロッカーで話しているのを聞いた。


「伊織さん、サユリさんのヘルプでvipの2卓一緒につける？」


黒服さんが焦った様子で聞いてくるから、思わずいいですよって返事。サユリさんと言えば、27歳と店の最年長。No.も1,2を毎月争っている"女神"だ。サユリさんの、、ヘルプになんてつけるのかな。不安しかない中、階段を登る。


「失礼します、一緒にお席につかせていただく伊織さんです。」

「知らんけど。立ってんのもアレやし座りいや。ボーイさんも下がっていいよ。ありがとう」


タバコを灰皿に擦り付けたその男の顔はよく知っていた。
プロ野球選手が来ているだなんて持っと耳を立てて聞いていればよかったのに。このルックスでプロ野球選手、しかも読売。将来有望な若手。



「名前、伊織やっけ？いくつ？」



トントン、と横を叩くからお隣失礼します、と挟んで腰を下ろす。まだ19です。ってニコニコ笑うけど、正直な心情、サカモト、イル。みたいな感じ。




「じゃあ酒飲まれへんやん……自分、おもろい？」

「え、いや多分坂本様の方が面白いです」

「は？？客の方がおもろいってあかんやん」



だってわたしも全部のカードだして会話できるわけじゃないから！！野球好きだけど言えないから！！ていうかあの笑顔の坂本の中身がこれとは笑



「……ええけどさ。俺今日疲れてんねん」

「手のツボ押しますよ」

「伊織ちゃん、！！すみません、この子まだ店入って少しで」

「いやええよ、押してくれんの？やってーや」




サユリさんが私に一瞬だけ睨みを効かせた後坂本様に頭を下げた。あ、これは私ロッカーで怒られるな…
このお店の女の子達はわりとお客様と距離が近い(精神的な意味で)気がする。例えば下の名前にさん付けとか、タメ口とか。

でも、サユリさんはお客様はお客様を苗字に様付けで呼んでいるし、ジッポをかざす作業だって素早く滑らか。タメ口なんてもってのほか。そんなナンバーワンに、私は日々扱かれているのである。怒られないわけがない。





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