その後5 ページ30
午前九時｡
機嫌の良い太宰に手を引かれやってきたのはお洒落な喫茶店｡
この場所で朝ごはんを食べるという｡
ここでも彼はイケメンぶりを発揮した。
何があってもレディファースト。
私が迷っていたら迷っていたものを注文し一緒に食べ。
私が御手洗に行ってる間に会計を済ます。
『カッケェ……』
｢ふふっ、こんなことお茶の子さいさいだよ｣
少しウィンドウショッピングをして、キリがいいところで遊園地と水族館が併設している場所へ赴く。
そこでもいつの間にか入場券を購っておいてくれた為、すぐに入れた。
｢惚れ直したかい？｣
『うっさい、莫ァ迦』
そんなの惚れ直すに決まってるでしょ？否、元からベタ惚れだわ。
なんて敢えて云わずに隠す。
ジェットコースターに乗ったりメリーゴーランド、観覧車、そしてイルカショーやヒトデ掬い体験などなかなかに楽しい時を過した。
楽しい時間は本当にあっという間であぁ、帰りたくないなと素直に思った。
｢ほらほら、もうすぐ着くよ。夕飯楽しみだねぇ｣
そう云って笑う彼は四六時中くっついていた。もちろんトイレ以外。
日は沈み、予約した宿まで徒歩で行ける距離だったため、ゆっくりと歩く。
私の歩幅に合わせ、さり気なく車道寄りを歩く彼。
手のぬくもり、ふとした瞬間に触れる肩。
心地の良い無言の時間。
あぁ、本当に────
｢……好きだなぁ｣
｢うん、私も好きだよ｣
何気ない一言に思わずぶわりと顔が赤くなるのが判る。
先程から……違う、初っ端から胸の鼓動が早い。
こんなにも一日中ドキドキしているなんて本当に恋とは恐ろしい。脈打ちすぎて死んじゃうんじゃないか？
とかとか変な方向に考えているといつの間にか宿に着いた。
｢予約していた太宰です｣
彼が名前を告げると女給さんがにこやかに案内してくれる。
辿り着いた和室の部屋は畳の香りと少しのお香が混ざって落ち着く。てか、え？こんなに広い部屋でいいのか？待て、部屋から海が見えるぞ？えっ、綺麗。
しかし一番目を引いたのは目の前の豪華な和会席料理だ。
｢お、美味し、そう……｣
｢それではごゆっくりどうぞ｣
振り返ると案内してくれた方は居なくなっていて和室には私と太宰のみ。
緊張もするがそれよりかお腹が空いた。歩き回ったからお腹ペコペコなのだ。
｢凄い豪勢だねぇ。早速食べようか｣
｢うん！｣
二人で向かい合って手を合わせたのだった。
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作者名：らしろ | 作成日時：2020年8月10日 1時
