第七話「死ねない」 ページ7
『……ゴホッ、ゲホゲホッ!!』
「やっぱり駄目か」
私は太宰の言葉を聞いて仰向けに寝転がる。
全身は傷だらけ。
太宰曰く、怪我して治ったのが異能であれば
また怪我しても異能で治る筈、だそう。
……ってそれでもこれは無いだろ!?
『太宰さん!?いきなりの発砲、メス投げは私、死んじゃ』
「あ、手が滑った」
『んあああああああああああ!!??』
此奴、またメスを投げやがった!
しかも心臓目掛けて!
私が間一髪避けたから良いけど……
何なの此奴!有り得ない!
慥かに私がこの子になる前は鬱陶しい奴だったかもしれないけど!
これは流石に度が過ぎてる!
『もう充分怪我しましたから!あとは異能で治るか見てみま』
「あ、まだ残ってた」
『ちょっ……だからってこっちに向けな』
────パァン!!
弾は左腕を掠った。
避け無かったら心臓だったよ?
何してくれてんの君。
「ふぅん、反射神経はいいね」
『……悪魔だ』
人に怪我させといて笑ってるぞ、この少年。
相当、太宰の心が歪んでるか。
はたまたそんなに私が憎いのか。
……どっちもだな。
『……痛』
一番、深い傷は左足だ。
完璧にメスが刺さってる。
血が溢れ、見るだけでも痛々しい。
「まだ終わってないよ」
額に冷たいものが当たる。
血の気が引いた。
そこを銃で撃たれたら私は……
「……じゃあね」
────パァン!!
何回目だろうか?
数えるのも止めた。
二十数回目の銃声が鳴る。
「……あぁ、やっぱり」
────カランッと少女の脚からメスが落ちる。
目の前の少女が光の放つ文字列に囲まれる。
少女が絶命した瞬間に異能が発動したのだ。
光はやがて消えた。
少女は穏やかに眠っている。
太宰はそっと少女の首元に手を伸ばす。
……ドクッドクッ、と指先から伝わってくる感触。
「生きてる……あぁ可哀想に」
少女はこの異能がある以上、死ねない。
殺されても異能があれば生き返る。
「……ふふ」
……太宰の無効化が無い限り。
太宰は無傷の少女を抱えて森の元へと行く。
きっと少女は……否、少女の異能は森に気に入られることだろう。
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「おめでとう、舞姫君」
『……どうも?』
目が覚めて早々、笑顔の森に拍手される。
なんとなく察しはついた。
そしてとてつもなく厭な予感がしたのだった。
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作者名:らしろ | 作成日時:2020年7月20日 0時