第六話「必要であれば」 ページ6
うん､見なかったことにしよう｡
私はそう決めて写真を日記に挟む｡
私は何も見てない｡
写真？そんなのあった？？
『却説､寝よう』
現実逃避をする為に私は蒲団に潜る｡
ほのかに花の香りがして安心する｡
私はその香りに誘われるように目を閉じた｡
***
｢森さん､僕は厭だからね｣
｢頼むよ､太宰君｡君しかいないんだ｣
ところ変わって薬品庫｡
森は不貞腐れいる太宰に向かって困った顔で笑う｡
｢彼女の記憶が曖昧な今､こちらに取り込む
森は棚の抽斗から薬を取り出して太宰と向き直る｡
太宰は未だにブーブー文句を云っていた｡
｢なんで僕なの？森さんでもいいじゃないか｣
｢若し彼女の異能が暴走した時に君の異能が必要だからね｣
｢別に彼奴が暴れたら森さんの異能でグサッと｣
｢彼女は殺さないよ､まだ｣
異能があり､利用できるのであれば生かしておく｡
マフィアの未来に必要であればの話だが｡
｢まぁでもそうだね｡太宰君の判断に任せるよ｣
｢……じゃあ｣
｢だからといって今殺しちゃ駄目だよ？もっと見極めてから｣
いいね？と圧を掛けられて渋々太宰は頷く｡
本当であれば今すぐにでも殺ってしまいたいと思った太宰だが､今事を荒らげたら森の計画が打ち砕かれてしまう｡
｢……はぁ､最悪だ｣
｢よろしくね､太宰君｣
森はニッコリと笑って太宰を送り出したのであった｡
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早朝､顔を洗って朝食を食べ､黒いスーツに着替える｡
『何この数字』
着替えてる時に見つけた左胸に赤い数字｡
“四八”
擦っても取れない｡
無気味に思いながら用意を済ませ､部屋を出ると扉の前には太宰が居た｡
｢遅い｣
『え､済みませ……』
最後まで云わないうちに彼は歩き出してしまった｡
私を待っていたのか？
『あの太宰……さん』
｢……｣
相変わらず目を合わせずにずんずんと歩いていく｡
私は意を決して一番知りたかったことを聞く｡
『お､お歳は……』
｢……十四｣
『じゅっ十四！？』
大きな声を出してしまい太宰から冷たい視線を浴びてしまった｡
いやだって､太宰が十四ならばまだ首領はまだ森さんじゃないかも｡
『……これから何処へ？』
｢地下｣
『……地下？』
嫌な予感しかしないのだが。
そしてその予感は中たるのだった｡
.
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作者名：らしろ | 作成日時：2020年7月20日 0時
