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第二十四話「異質だ」 ページ24

太宰はにっこり笑った。




「君が僕を見た時の最初の反応もそうだけど……」




私引きつった笑顔で笑い返した。




「僕が気付かないと思った?」



『……えっと、思ってたのが半分、思っていなかったのが半分です』




ここで誤魔化そうとしたが、何せ相手は太宰だ。

いくら子供といえどもとんでもない頭脳を持っていることには変わりない。




「因みに云うとね?僕は君が何故この子に成り代わったか知ってるんだけど」



『……へ?』




私が此処に来たのか知ってる?

私が何故この子に成り代わったのかを知ってるっていうの?




『何故貴方が知ってるんですか』




声が震えた。

何故だか太宰が怖く感じた。

何を知っているんだ、この男は。




「だって君は……否、君だった子は……」




太宰はすっと目を閉じる。


何かを思い出すように。


そして直ぐに目を開く。




「僕が殺したようなものだからね」




太宰はゆっくりと立ち上がって私の手を引っ張る。

上手く足に力が入らなくて私は上手く立てなかった。




『貴方が?何故……?私がスパイだから?』



「そんな理由じゃない。そんな事よりもっと重大な事実を知った君はこの世界に絶望したんだ」




よく解らなかった。

スパイだとバレた事で殺されたのかと思ったら違う?

それを上回る事でこの子は……




『何があったの?この子に……何が』



「覚悟はある?」




太宰は私の顎を掴んで力を入れる。


真っ黒な瞳が私を射抜く。




「この事実を知った時、君はまた絶望するかもしれないよ」



『……』




異能特務課の潜入捜査としてマフィアに入り

最悪最低の悪女に成りきり

人を何人も殺したこの少女が絶望した事実でも

私は知りたい。




『安心して、私は一度、死んでいるの。たくさんの後悔を残してね。
だから真実を知ったって取り乱して自分で命を絶とうなんて思わない。
もう後悔を残して死にたくないから』




太宰はじっと私の目を見てゆっくりと離れた。




「君の異能は異質だ。時間制限があろうが人を生き返らせることが出来る」



『……そう、です』




太宰はソファに座って日記帳を捲る。

静かな部屋に紙のすれる音が聞こえる。




「それを政府が黙って見過ごす訳にはいかない」



『……』




私は黙って頷く。


危険な組織に拾われるよりかは

政府の監視下に置くか

政府の人間になった方が妥当だ。




「だから政府は君に接触しようとした」






.

第二十五話「愛されたい」→←第二十三話「爆弾発言」



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作者名:らしろ | 作成日時:2020年7月20日 0時

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