検索窓
今日:27 hit、昨日:16 hit、合計:281,626 hit

第二十一話「料理は得意」 ページ21

『……首領、舞姫です』




黒服から嫌そうな顔で「首領がお呼びだ」と云われた。


……そんな顔しなくてもいいではないか。


私はとぼとぼと最上階へと足を運んだのだ。




『……首領』




いくら叩敲しても返事はない。

見張りの黒服は何も云わない。


……私の予想ではエリスを追いかけ回してるような気がするんだが。




『……首領、失礼しますよ?いいですね?何回も呼びましたからね?』




そう云ってゆっくりと扉を開ける。

ちらりと隙間から中を覗くと静かだった。

二人が走り回ってると思ったら違った。




『……首領?』




扉を大きく開けて呼び掛ける。

すると執務机に座っていた森が顔を上げる。




「……あ、済まないね。気付かなかったよ」



『顔色が優れぬようですが大丈夫ですか』




扉を閉めて執務机に近付く。

彼の目の下には隈が出来ていてやつれて見えた。




『食事は取っていますか』



「これでも医者だよ。自分の健康管理はしっかりとやっているよ」



『……無理をなさらないでくださいね』




森は少しキョトンとした顔をして柔らかく微笑んだ。




「君にそんな事を云われる日が来るとは」



『……あ、あはは』




たまに毒づいてくるよねこの人。

でも心配したのは本当だ。




「でも最近は外食が多くて野菜をあまり食べてないなぁ」



『……でしたら私がお作りしましょうか』



「……え?」



『こう見えて、料理は出来るんですよ』




森は目を見開いて信じられないとでも云いたそうな顔をする。

そこまで驚かなくてもいいんだけどなぁ。




「君が料理を?出来るのかね?」



『はい、今でもしっかりと自炊してます』



「……記憶を無くす前の君は暗黒物質(ダークマター)を作り出す天才だと太宰君が云っていたんだが」




マジか。

てかその暗黒物質(ダークマター)を太宰にあげてたの?

凄いね、勇気があるよ。

もしや自分が暗黒物質(ダークマター)を作ってるのは自覚無しだった?




『……ご安心下さい。暗黒物質(ダークマター)ではありませんから』



「……期待してるよ」





……もしやこの事で私を呼んだのだろうか?




話の区切りが着いたら森はゆっくりと立ち上がり伸びをした。




「……ふぅ、本題に入ろう」



『は、はい』




彼の目付きが変わった。

途端に執務室の空気が冷たくなる。

やはり違う、別の件で呼んだんだ。

私は背筋を正して森を見た。


.

第二十二話「教えてください」→←第二十話「蛇に睨まれた蛙」



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (148 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
381人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン
感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:らしろ | 作成日時:2020年7月20日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。