第五十四話【そんな日が】 ページ8
『……ロミオとジュリエットみたいだね』
私がそう云うと太宰君は私の顔を見て微笑んで首を振った｡
｢嫌だね､それは悲劇だ｡私は君とずっと一緒にいたい｣
慥かにロミオとジュリエットは最後に死んでしまう｡
しかもその終わりがとても悲しい｡
『……立場的なことが似ているんだよ｡私達は敵同士でしょう？』
｢……敵にならなければいい｣
ボソリと呟いた彼の声に私は悩む｡
武装探偵社とポートマフィアが協力関係になるのはまだ望みがある｡
けれど政府とポートマフィアが協力関係になるのは不可能に近い｡
まず､政府の方が話を聞いてくれないだろう｡
『……そんな日が来ればいいね』
｢きっと来るさ……｣
太宰君は立ち上がって私の真正面に膝を付く｡
私は驚いて目を丸くする｡
｢……私の
『……BAR？』
BARには最近行ったなぁと思いながらも､太宰君が伸ばした手をそっと重ねる｡
『……ふふっ､
｢お望みならばいつでも呼ぶよ｣
『……うーん､でもやっぱり名前で呼ばれる方が好きだな』
昔は名前なんてただ呼ぶだけのもので生きる上で重要じゃないと思っていた｡
けれど福沢さんに名前を与えられた日から､名前を呼ばれる度に嬉しくて､“自分はちゃんとここに居るんだと”思えるようになった｡
｢……A｣
『あはは､なぁに？太宰君』
｢ふふっ､行こうか｣
互いに笑って歩き出す｡
目的地に着くまで話の続きをした｡
｢そういえば龍頭抗争後の政府は諦めなかったから話がズレちゃったね｣
『あ､慥かに』
私は思い出して考える｡
龍頭抗争終結の三日後に政府が探偵社に来て私を政府に戻すよう福沢さんに云った｡
｢探偵社の社長が拒否するのは目に見えていた｡しかし何故､政府はAをそこまで政府に？｣
『……澁澤さんが居なくなったから』
澁澤龍彦､龍頭抗争を掻き乱した男｡
そんな彼が抗争後に行方不明となった｡
彼は私と同じで“国家規模の異能侵略”に対抗しうる貴重な異能力者｡
そんな彼が居なくなった日本の政府は私に手を伸ばしたのだ｡
｢……“国家規模の異能侵略”ねぇ｣
『異能なんて無くなれって思った｡けど……』
私は立ち止まって太宰君に笑いかけた｡
『異能が無かったらお父さんや太宰君達に逢えなかったかもね』
.
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らしろ(プロフ) - よ だ かさん» コメントありがとうございます。更新楽しみにして下さりありがとうございます！これからも頑張ります。 (2020年5月31日 13時) (
レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
よ だ か(プロフ) - 続編おめでとうございます!! これからも更新を楽しみに待ってます！ (2020年5月31日 13時) (レス) id: c6fcdfc168 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らしろ | 作成日時：2020年5月31日 11時
