第六十四話【目に焼き付けた】 ページ18
｢……なんじゃ､鴎外殿｡
あの二人はもう出来てるのかえ？｣
｢どうだろうね｡相思相愛ではあるけど……｣
｢マジか､あの太宰が……｣
なんか三人が色々云っているが気にしないことにしよう｡
太宰君は私の手を片手で握ったままもう片方の手は紫色の着物を指さす｡
｢次はあれを着てみよう｣
『……紫？』
｢君の瞳と同じ色だから､きっと似合う｣
そんな事を云われたら頷くしかない｡
尾崎さんは紫色の着物を持って私の手を引く｡
『……ありがとう､何度も着付けてくれて』
｢善い､私も好きでやっていることじゃ｣
てかこの店の店員はどこへ行ったのだろう｡
もしやこの着物屋もマフィアの傘下か……
帯を結んでもらっている時にふと尾崎さんは思い出したように問う｡
｢お主は太宰と付き合っているのかえ？｣
『…………え？』
鏡越しで尾崎さんを見る｡
至って真面目に質問してきた彼女に私は正直に答えた｡
『……付き合ってないよ｡抑も付き合えないよ』
｢……そうか｣
尾崎さんはそれ以上何も云わなかった｡
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『……なんか見返りがありそうで怖い』
沢山の着物を抱えて店を出る｡
チラリと隣の大人たちを見ると満足そうに笑っていた｡
……この着物､お父さん達にどう説明しよう｡
｢全部似合ってたよ､A｣
『はは､ありがとう｡綺麗な帯まで……こんなに沢山……』
太宰君にお礼を云ってハッとする｡
そう云えば購ってくれた森医師にお礼を云っていない｡
『森医師』
｢如何したの､Aちゃん？｣
『着物､購ってくれてありがとう』
森医師は真顔になって胸を抑えてごほんっと咳払いをして私の頭に手を乗せて微笑む｡
｢……娘にしたい｣
『……尾崎さん！』
｢何かえ？｣
｢あ､無視された｣
私は森医師を華麗にスルーして尾崎さんに向き直る｡
『着付けてくれてありがとう！』
｢似合う着物があって善かった｣
綺麗に微笑む尾崎さんに見惚れる｡
私も大人になったらこんな素敵な人になりたい……
『中原君もありがとね運転』
｢ンなお礼なんざ要らねぇよ｣
｢やーい雑用｣
｢手前は黙っとけ青鯖｣
太宰君は中原君に首を絞められてる｡
太宰君は愉快そうに笑う｡
中原君はそれを見てまた激怒｡
森医師は苦笑いして､尾崎さんは呆れてる｡
その光景を私はしっかり目に焼き付けた｡
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らしろ(プロフ) - よ だ かさん» コメントありがとうございます。更新楽しみにして下さりありがとうございます！これからも頑張ります。 (2020年5月31日 13時) (
レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
よ だ か(プロフ) - 続編おめでとうございます!! これからも更新を楽しみに待ってます！ (2020年5月31日 13時) (レス) id: c6fcdfc168 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らしろ | 作成日時：2020年5月31日 11時
