第五十七話【意地でも】 ページ11
深い夢を見ていた｡
小さな少女が蹲って檻の中にいた｡
私はそれを見て目を細める｡
｢立て､貴様はまだ任務が残っているんだろう｣
厳つい男や身なりの良い女が檻の前に立って罵声を浴びせる｡
屑だの役立たずだの足で纏いだの｡
少女は泣きながら立ち上がる｡
｢……なんで？｣
少女は傷だらけになって言葉を零す｡
涙で頬の傷が染みる｡
｢みんな……こうやって……生きて……るの？｣
嗚呼､そうだ｡
外の世界を知らなかった私は自分と同じくらいの子供はこういう扱いをされるとばかり思っていた｡
『……本当は違うのに』
まだ福沢さんに出会う前｡
檻の中の小さな子供は寒さに耐えながら震えていた｡
『私がまた政府に戻ったら……』
昔と同じ扱いを受けるのだろうか？
そんなの嫌だ｡こんな苦しい生活はしたくない｡
｢……つらら｣
ふと聞き覚えのある声に視線を檻へ戻す｡
見覚えのある姿に息を呑む｡
｢……生きなさい｣
少女の頭に手が乗った｡
少女は不思議そうに目の前の女性を見る｡
｢意地でも生きなさい｡そうすればきっと希望は見える｣
そう云って女性は消えた｡
夢なのかなと思ったけど頭に手が乗った感触は覚えている｡
『……誰だったんだろう､彼の人……』
最初で最後だった｡
その女性が私の前に現れたのは｡
この檻の場所を知っているのは政府の上層部しか知らないのに､何故彼の人はここへ来たのか｡
あの女性は何者だったのだろうか｡
私は意地になって生きた｡
そうして福沢さんと出逢ったのだ｡
福沢さんと福沢さんの恩師のおかげで檻の外に出た｡
それから何故か私にメロメロな森医師
名探偵の乱歩君や優しい晶ちゃん
私と価値観が似ている太宰君､仲間思いな中原君
たくさんの出逢いを果たして
たくさんの経験をして
たくさんのことを学んだ
そして……
｢……A｣
どこからか私の名前を呼ぶ声がした｡
『……んっ』
重たい瞼を上げる｡
目の前には太宰君の顔｡
『……あれ』
ガバッと起き上がる｡
見知らぬ部屋｡
カーテンから漏れ出る光｡
見覚えのないベッド｡
私の隣に太宰君｡
｢おはよう｣
『あ､お……おはよう？』
聞きたいことがあるけど､口を開いた瞬間に太宰君から挨拶をされて返事をする｡
｢ご飯食べようか｣
太宰君の爽やかな笑みに私は流されそうになった｡
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らしろ(プロフ) - よ だ かさん» コメントありがとうございます。更新楽しみにして下さりありがとうございます！これからも頑張ります。 (2020年5月31日 13時) (
レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
よ だ か(プロフ) - 続編おめでとうございます!! これからも更新を楽しみに待ってます！ (2020年5月31日 13時) (レス) id: c6fcdfc168 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らしろ | 作成日時：2020年5月31日 11時
