第五十一話【曖昧な返事】 ページ5
｢うふふ､やっと逢引が出来る……｣
心から笑う太宰君からは殺気は消えて表情が柔らかくなった｡
｢……鴎外殿にはどう云うつもりかえ？｣
｢……まぁそこはなんとかするよ｣
太宰君が微笑んで私の腕を掴む｡
そして歩き出した｡
『あ､ちょっ､太宰君』
｢ほら､今日は夜更かしするんだろう？｣
流石は太宰君だ｡
私のルーティーンを解ってらっしゃる｡
エントランスを出て何故か手を繋いで街へ向かう｡
『どこ行くの？』
｢ゲェムセンターに行かないかい？｣
『すごく行きたい』
きっと私の目はキラッキラに輝いていることだろう｡
返事を聞いた太宰君は満足そうに微笑んで鼻歌を歌う｡
｢んふふ〜､あとは何処に行きたい？｣
『太宰君は？』
｢私は君の行きたいところに行きたい｣
『相変わらずお上手で』
｢A｣
ふと立ち止まった太宰君を不思議に思い見上げる｡
片目でも判る､彼の目は本気だった｡
｢私は君以外にこんなこと云わないから｣
『あ……えっ､うん……そう……か……ははっ』
そんな目で見られたことがないから緊張してしまう｡
何故か心臓が早い｡
｢……行こうか｣
『……そ､そう……だね』
ずっと離れない手｡
騒がしい街の中を歩いているのに何故か周りの音が遠くに聞こえる｡
心臓の鼓動が耳元で聴こえる｡とてつもなく早い音｡
｢嫌だった？｣
｢…………え？｣
彼の問いになんて答えれば判らず俯く｡
彼は私を好いている｡
だけど……
『……大丈夫』
曖昧な返事をした｡
肯定でも否定でもない､それが彼を傷付ける事になるのに｡
でもどうしてもハッキリさせたくなかった｡
『あ､あ〜そういえば……』
パッと彼との手を離して数歩前を歩く｡
『私､デザァトを食べたかったんだよね｡ご飯食べた後って甘い物が欲しくなるからさ』
｢ならば甘味処に行くかい？この近くなら彼処が｣
『いやいやその､申し訳ない｡私だけが行きたい場所に行くのは……しかも太宰君､甘い物食べないでしょう？』
遠回し(？)に解散したいという意思を伝える｡
彼と一緒にいるのは嫌ではない｡
けれど気まずいのだ｡可笑しい､四年前はこんな事なかったのに｡
｢そんな事ない､私だって甘い物は食べるよ｣
『いや､その……でも』
｢……判ったよ｣
太宰君が悲しそうに微笑む｡
何故か私の心が苦しくなった｡
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らしろ(プロフ) - よ だ かさん» コメントありがとうございます。更新楽しみにして下さりありがとうございます！これからも頑張ります。 (2020年5月31日 13時) (
レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
よ だ か(プロフ) - 続編おめでとうございます!! これからも更新を楽しみに待ってます！ (2020年5月31日 13時) (レス) id: c6fcdfc168 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らしろ | 作成日時：2020年5月31日 11時
