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第八十五話『ドンナ表情ヲスレバ善イ』 ページ5

『……敦』



敦「……芥川」




一度本部へ戻り、白い外套を纏って仕方なく外へ出た
そしてやっと見つけた
静かな海が見える公園。ベンチに座って父子を見る敦はいつもと違う雰囲気だった




『……辛いか?まあ、聞くまでもないか』



敦「……なあ、芥川。院長先生は何故僕が虎だと皆に秘密にしていたと思う?」




眉間に皺を寄せながら俯く
そんな彼の隣に腰掛ける




『さあな。しかしあの虎を匿うとは、相当苦労したと思うぞ』



敦「……」



『そういえば……院長が何を購おうとしていたのか判ったか?』



敦「……ああ。乱歩さんの云う通り花屋に行った」




そこには予約していた花束があったらしい




『その代金の為に院長は持っていた銃を売ろうとした……が、事故に遭い亡くなった』



敦「……それでも僕はあの人を許せない。本当に……本当に辛かったんだ。今更何をしたって許す訳……」



『許す必要などない、院長がお前にした事は決して許されないことだから。

だがお前は知る必要がある。あの院長の過去を、何故、敦に自分と同じような地獄を施したのか』



敦「知る……必要なん、て……」



『あの院長の言葉でお前は此処に生きている。

自分が虎だと知った時も

鏡花を救わんとした時も

僕と闘おうとした時も

成金を倒そうとした時も……』




身を呈して沢山の人を救った、闘った




『その地獄を経験したからこそ、今の“中島敦”がいるんだ』



敦「……っ」



『じゃあ、僕はそろそろ……』



敦「芥川……っ!」




腕を掴まれ驚いて敦を見る
眉を顰め、今にも泣き出しそうな顔をしていた




敦「僕はどんな表情をすれば善いんだ?
憎い相手が死んでこの世の何処にも居なくなったのに、どんな顔でいれば善いのか判らない……」




何を云っているんだ此奴は
泣く五秒前の顔をしている癖に……




『そんなの自分で考えろ……まあ、でも。今まで育ててくれた人が亡くなるとならば、泣くのが当たり前じゃないか?』




そう云うと目を見開き驚いた顔をする
唯、一般論を云っただけだが……




敦「泣くなっ、て……怒らないのか……?」



『あぁ、河川敷の時の涙とは違うだろう?悲しかったら泣けばいい』



敦「悲しく……なんか、ないっ!!」




唇を震わせながら怒鳴る敦の瞳からツゥと涙が伝う
そんな彼の頭に手を置き、ゆっくりと撫でた


.

第八十六話『紛レモナイ事実』→←第八十四話『ソレガ真実』



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らしろ(プロフ) - Regulusさん» コメントありがとうございます。楽しみにして下さり嬉しいです。頑張ります(*^^*) (2019年6月19日 20時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
Regulus(プロフ) - このお話大好きです(*≧ω≦)続き楽しみに待ってます!更新頑張ってください(*≧∀≦*) (2019年6月15日 6時) (レス) id: 9c91fd3a1d (このIDを非表示/違反報告)
光牙(プロフ) - 私的には太宰オチがいいな〜。個人の意見なんで気にしないでくんさい。そして更新がんばれ!応援してます(^ー^)ノ (2018年12月11日 21時) (レス) id: bfcb6bfd1c (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - Lamia0495さん» コメントありがとうございます。オチはまだ未定ですが、色々考えてみます( ^^ ) (2018年9月12日 0時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
Lamia0495(プロフ) - 敦くんオチ…だったらいいなぁ… (2018年9月11日 20時) (レス) id: a731b4f87b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らしろ | 作成日時:2018年9月8日 18時

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