漆黒の狗は原作を知らない為困っているそうです3【文スト】【芥川成り代わり】

第××話『アノ日ノ記憶“壱”』 ページ38

『…………痛いです｡太宰さん』



太｢……Aちゃ……ん｣





太宰の執務室､ソファにて
書類の仕事をしている芥川の横に太宰が座り彼女の腰に抱き着いて離れないこと数時間｡





『確かに素直になって下さいとは云いました｡然しここまで素直になられると……』



太｢……黙って｣



『判りました』



太｢……｣



『……』



太｢矢っ張り､何か話して｣



『太宰さんの髪ってふわふわですね｡髪の毛だけ結構好みです』



太｢私も好きだよ｡大好き､今すぐにでも押し倒し｣



『黙れ』



太｢……ちぇっ｣





芥川は片手で彼の髪を弄り､もう片方の手で書類を触り内容を確認していく





『あの､この書類は貴方の仕事です｡判ってますか？』



太｢Aちゃあん｣



『だから名で呼ぶなと』



太｢今日の夜ね､任務を任された｡だから私は今日､此処を出る｣





ピタリと芥川の動きが止まる｡しんっと張り詰めた空気が漂う
太宰は顔を彼女に押し付けたままで､表情が読めない





『ならば作戦を立てましょう』



太｢……へ？｣



『作戦立案ですよ､太宰さん』





顔を上げ､驚いた顔の太宰｡彼女はそんな彼の頬に手を当て微笑む





『もしかして止めるとでも思いましたか？そんな事しません｡貴方が決めたこと､僕は否定などしません』





先刻まで持っていた資料を乱暴に床に放り投げ､ソファの下から分厚い資料を出した
それを見て太宰は更に目を丸くさせる





太｢……“太宰裏切り作戦書”｡このことを予期していたという事か｣



『作戦立てるのは苦労しましたよ｡なんてったってポートマフィアを裏切るのですから』





ニコリと無邪気に笑った芥川に太宰は頬を緩ませる





太｢なら､君も来るかい？｣



『……え？』





まさかの言葉に今度は芥川が目を丸くした
あの太宰が芥川を誘った……信じられない





太｢おや？私が誘うのは予想外だったかい？｣



『……ええ､まぁ』



太｢結構本気だよ｡君だっておだムグッ……！？｣



『止めて……ください｡今､まだ､その名前､は……出さないで』





震える手で太宰の口を押さえ､唇を噛み締める
まだ信じられない｡彼が死ぬなんて思いもよらなかった





太｢……A｣





太宰は彼女を引き寄せ抱き締める
細い背中に手を置き､壊れないようにでも離れないようにしっかりと抱き締めた





『ごめんなさい､ごめん､な……さい』





彼女の嗚咽が静かに響いた


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