漆黒の狗は黒の時代でも困っていたそうです5【文スト】【芥川成り代わり】

第百八十一話『説明ガ欲シイナ』 ページ24

────ドサリと地面に勢いよく倒れた｡




芥川の腕からじわりと血が滲む｡




｢……っ､芥川さ｣



『……やってしまった』




尻餅をついていた黒服は急いで自分を庇ってくれた
芥川に駆け寄る｡


ミミック兵が間髪入れずに撃ってきた弾丸は確実に黒服の心臓を狙っていた｡


それを芥川が庇った事で事なきを経たが､大事な情報源を
羅生門で……殺してしまったのだ｡




『……他の者は』



｢……駄目です､銃で撃たれ息が｣



｢……芥川さんは大丈夫ですか｡腕は……｣



『……僕のことはどうでもいい｡しかし拙いことになった』




芥川が云い終わった時だ｡


鉄扉が開かれた｡


全員が肩を震わせた｡




太｢説明が欲しいな｣




太宰の目の前には､息絶えた三人のミミック兵｡

狼狽えている三人の黒服｡

腕を押えて俯いている漆黒の死神｡




｢マフィア傘下のカジノを襲撃したミミックの尖兵を
昏倒性の瓦斯で捕らえ｣



太｢……違う｣



｢えっ……あっ……想像よりも早く兵士の一人が｣



太｢……違うだろ｣



｢……て､手枷を……嵌める……前に……その兵士は……
我々から……じゅ､銃を奪い､仲間の兵士を殺した……
後にわっ､我々を殺そうと襲い……かかって､そ､それを……｣



『……それを僕が……殺してしまった』




しんっと静まる収監房｡
太宰はじっと芥川を見ていた｡




太｢……成る程ね｡問題大ありだ｣




コツっと嫌に響く靴音に芥川は頭を下げ､謝る｡

そんなことをしたって時間は戻らない｡
情報は手に入らない｡




『今すぐに僕がミミック兵を連れてきます｡なので猶予を……』



太｢……その怪我は？｣



『……け､怪我……ですか？』




太宰の視線の先には黒い外套でも判る血の滲んだ模様があった｡

痛みが無いとは云わないが､こんな怪我よりミミック兵を
殺してしまったことの方が辛い｡




『これ､は……僕の注意不足故に招いたもので』



太｢……君が？注意不足？何故？｣



『……それ､は｡僕が一瞬だけ気を緩めた所為です』



太｢……気を緩めた？他に何かある筈だろう､ねぇ？｣




太宰は黒服三人に目を向ける｡

彼等は肩を震わせながら乾いた口を開く｡




｢……か､彼がミミック兵の片腕を拘束している間に……
我々が……次の行動に移らなかった為､怪我を……｣



『……そ､そんな事はない！元はと云えば僕が』



太｢黙ってろ､芥川君｣




太宰の冷たい声が芥川に降り注いだ


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