漆黒の狗は黒の時代でも困っていたそうです5【文スト】【芥川成り代わり】

第百六十九話『私達､付キ合オウ』 ページ12

太｢Aちゃん｣




ある日の昼下がり
太宰の執務室で本を読んでいた芥川は､またかと思い口を開く




『……何ですか､太宰さん』



太｢ふふふっ｣




最近こんなやり取りが多い
太宰との蟠(わだかま)りが消えて数週間

彼がどんな手を遣ったかは知らないが蟠りが消えた日に首領から､太宰のところへ戻っていいと云われた

……その後に､労いの言葉をかけられたが




太｢そろそろ苗字じゃなくて名前で呼んでもらいたいな｣



『見事に僕と逆ですね｡僕は名前で呼んでほしくないです』



太｢二人きりの時はいいだろう？｣



『絶対に厭です』




嫌そうな顔をして真隣の上司を見る
彼は逆にニコニコ上機嫌で芥川を凝視していた




太｢そんな寂しいこと云わずにね｡三､二､一､はい！｣



『……お､おさ……む幹部』



太｢なんでその時だけ幹部呼び｣




名前で呼べとは云われたが幹部をつけては駄目だと云われてない
ムスッとした表情の芥川に太宰はまぁいいか､と彼女に抱き着く




『邪魔です｡本が見えません』



太｢本じゃなくて私だけを見てよ〜｣



『……』



太｢あー無視した｣




グダグダ云っている太宰を本気で殴ろうと拳を構えた時だ｡執務室の扉がノック無しに勢いよく開かれる




中｢おい太宰ッ！芥川にセクハラすんじゃねェ！仕事しろや！｣



太｢うわっなんかちっこいのが来た｣




ちっこいの基､中原中也は目の前で相棒が後輩に抱きついている姿を見て溜息を零す




『お疲れ様です､中原さん』



中｢おう､青鯖のお守りは大変だろ？｣



『はい､とても大変です』



太｢本人の前でそれを云う？｣



『でも楽しいです』



太｢私も同じく､愛してるよ｣



『そんなこと云ってない』



中｢そんなこと云ってねェ｣




秒で突っ込まれなんとも云えない太宰は項垂れる
それでも芥川の腰に張り付いたまま




『中原さん知っていましたか？太宰さんの髪の毛って凄くふわふわなんですっ』



中｢お､おぉ……目を輝かせて嬉しそうだな｣



『あまり触りすぎるとふわふわ感がなくなると思って一日に一回しか当たらないようにしてますが』



太｢そんな事ないよ！？だから君､二回目の頭撫では嫌がるのだね！？｣



中｢待て！何で手前は頭を撫でてもらってんだ！ったく､恋人同士でもねェのに……｣




中也の言葉に太宰はハッとする
そして彼は膝をついて芥川の手を取り云った




太｢Aちゃん｡私達､付き合おう｣




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