第七十二話『頼ッテヤル』 ページ32
ゾクリと背筋が凍り、目の前を見つめる
その先にはゆっくりと立ち上がるフィッツジェラルドの姿があった
フ「“
この世のすべてを犠牲にする価値のあるものが“家族”以外に存在すると思うか?」
冷たい声で確かめるように語りかける
二人は眉を顰め唯、彼を見つめるだけ
フ「俺は“本”を手に入れる。そして娘をこの世に呼び戻す」
『娘……』
チクリと胸が痛む
この世界に来る前の両親を思い出す。自分が居なくなったあの世界は一体どうなっているのだろうか
フ「妻ゼルダは娘の死を受け止められず心を病み、“娘はロンドンに留学中”という妄想の中に今も逃げ込んでいる」
だからその妄想を本を遣って現実にするという
フ「どんな犠牲を払っても処分可能な俺の資産、そのすべてを支払う!」
強風が襲う
思わず膝をついて目の前の男を凝視する
『……ッ』
これが組合の長の覚悟なのだ
云い難い何か強いものが迫ってくる
敦「芥川」
『何だ』
敦「僕は……愚かか?」
ゆっくりと腰を上げ立ち上がる敦
芥川の後ろにいる彼の表情は判らない
敦「あの記憶から逃げたいと思う事は下らないか?」
『ああ下らぬ』
重たい身体に鞭を打って起き上がる
そうだ、下らない。いつまでも過去に縛り付けられるなど前に進めないだけだ
『何故なら苦しめる過去の言葉と、貴様は本質的に無関係だからだ』
「……そう、か」
震える声で呟くように云った敦は足を進めて芥川より前へ出る
敦「……芥川」
『……何?』
敦「お前は一人じゃない」
目を見開き固まる
……一瞬だけ彼の人と重なったのだ
敦「もっと僕を頼れよ、芥川」
────もっと俺を頼れ、芥川
ふっと頬が緩む
脳裏に浮かぶのは酒を片手に微笑む彼の人の姿
……過去に縛り付けられているのは僕も同じ、か
『ああ』
敦「……!」
『今回だけは……頼ってやる』
ふわりと微笑む彼女に敦は目を丸くして顔を赤くさせる
それに気付いた芥川は眉を寄せ敦の背中を思いっきり叩いた
『行くぞ、敦!』
敦「あ、ああ!」
二人の目が光る
目的は同じ、為すべきことも同じ
ならば協力あるのみ
月下獣────半人半虎!
羅生門────天魔纏鎧!
この街を守る為、大切な人達を守る為
フ「来い……!」
二人は飛び出した
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らしろ(プロフ) - シアトルさん» 優しいと思えば、意外と裏切られる芥川ちゃんでした(笑) (2018年9月7日 17時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
シアトル(プロフ) - 太宰さんは相変わらずクソであった…でめたし、でめたし…? (2018年9月7日 0時) (レス) id: 93e9cd7354 (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - 埴輪型竹輪さん» そのまさか……かも?しれないです(笑)ご期待ください! (2018年9月3日 23時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
埴輪型竹輪(プロフ) - え......まさかあの方と関係が...! (2018年9月3日 22時) (レス) id: 4f1c00f9fa (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - 鈴さん» まさか……!です(笑)、次にご期待ください! (2018年9月3日 21時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らしろ | 作成日時:2018年7月3日 21時