第六十九話『護リタイモノ』 ページ29
敦「大丈夫か、芥川?
それにしてもあんな桁外れの異能に勝てる訳ないよ……」
『隙を見て端末を奪うなど……難しいな』
敦「ぐっ……なら如何したら」
『考えている暇はない。この箱の行く先は逃げ場なき甲板搬入口、即ちそこが僕等の最終決戦場になる』
青ざめる敦の顔
頭を抱え、如何しようと呟く彼にため息が出る
『そのくらいで臆するな。まあ、当然か。生きて良い理由を他者に求めるような下らぬ輩だからな』
敦「……っ、確かに僕は愚かで下らない。でもお前みたいな力を誇示したいだけの殺人鬼より百倍ましだ!」
『……何?』
敦「違うか?力も地位も十分有るのに、その上更に自己中心的な理由でから戦うなんて、その方が余程下ら……」
ゴッ!と羅生門が敦の腕を抑える
芥川は震える唇をぐっと噛み締める
『取り、消せ……僕が“力も地位もある”だと?』
敦の胸ぐらを掴みキッと睨みつける
そんなモノなんてひとつもない。寧ろ不足している
『貴様を“不快”と云った理由を教えて遣る。
貴様がすべてを持ってい乍ら、その事に気付きもせず、己が古傷に甘え続ける愚か者だからだ!』
敦「…………え」
『異能に恵まれ、出会いに恵まれ、境遇にも恵まれ、努力もせずただ運だけで太宰さんに……社員に認め讃えられ乍ら!
貴様はその幸福にも気づかず己の悲劇ばかり浸る愚物だからだ!』
“僕なんか”、“矢っ張り無理だ”、“僕は愚か者だ”───
そんな言葉を吐き続ける敦が烏滸がましい
彼は地獄のような道を歩んできた、然しそれはお前だけではない。
私だって───
『お前は前に僕に聞いたな。“使命は何だ?”と』
真っ黒い瞳に驚いている顔の敦が映る
『僕の……私の使命は“この街を護ること”』
敦「この街……を?」
『そう。そしてお前を……護ることだ』
敦「僕をまも……ん?」
ハテナマークを浮かべて首を傾げる
そんなのお構い無しに続ける
『いつかこの世界に本当の幸福が来る日まで……私は其れ等を守り続ける』
敦はほんの一瞬、息をするのも忘れて彼女を見詰めていた
『その為にはもっともっと強くならなくてはいけない。
だから説教などしている場合ではない。寧ろお前は私の前に現れて欲しくない。』
敦と対峙すれば嫌でも芥川龍之介の血がザワついて殺したくなる
けれどそれではいけない。だって……
『お前は既に私の───護りたいモノに入っているから』
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らしろ(プロフ) - シアトルさん» 優しいと思えば、意外と裏切られる芥川ちゃんでした(笑) (2018年9月7日 17時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
シアトル(プロフ) - 太宰さんは相変わらずクソであった…でめたし、でめたし…? (2018年9月7日 0時) (レス) id: 93e9cd7354 (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - 埴輪型竹輪さん» そのまさか……かも?しれないです(笑)ご期待ください! (2018年9月3日 23時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
埴輪型竹輪(プロフ) - え......まさかあの方と関係が...! (2018年9月3日 22時) (レス) id: 4f1c00f9fa (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - 鈴さん» まさか……!です(笑)、次にご期待ください! (2018年9月3日 21時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らしろ | 作成日時:2018年7月3日 21時