第六十一話『アノ頃カラ』 ページ21
とある病室にて
坂「お久しぶりです。もしかして捕まりに来たんですか?」
安吾はベッド脇に立っている白い外套を着た女を見上げる
『……捕まって牢屋に入った方が幾分か楽だろうな』
視線を下げ小さく口を動かす彼女に安吾は自分の腕を見る
坂「やるなら今ですよ。僕を殺す
『……今の私は芥川龍之介ではないです。そんなバッサバッサと人を殺したりしない』
坂「では何故ここへ?」
『太宰さんに何か云われませんでした?四年前のことで』
安吾の瞳が揺れる。それを見逃さなかった彼女は矢っ張りといった様子で溜息を吐く
『別に私は貴方のことを怨んではいません。あれは私の落ち度が問題でしたし、私がもっと強ければ彼の人は……』
坂「Aさん、やめてください」
『しかし本当に貴方は悪くない。悪いのはモガっ!』
太「はぁい、マイナス思考になるのはやめようか。Aちゃん?」
それ以上は云わせまいと芥川の背後から彼女の口を手で塞ぎニッコリと笑う太宰
『なっ、何故貴方が此処に!?』
太「君の行動は手に取るように判る。私が此処から居なくなった後、必ず安吾に会いに来るだろうと踏んでいたんだよ」
坂「……待ち伏せ、ですか」
太「ふふ、残念だったね。Aちゃん」
勝ち誇った笑みの太宰に彼女は鋭く睨みつける
折角、太宰が去っていった後に安吾と色々話そうとしたのに、これじゃあ駄目だ
『ふん、別にいい。好機はいくらでもあるみたいだし……』
太宰の手を払い除けて病室を出ようとする
太「一つ云っておこう。君は悪くない、あれは……」
『なら一体何を責めればいいんですか?
三社構想の為に必要だった“異能開業許可証”を手に入れた森さんですか?
死ぬと判っていながら敵陣に突っ込んで行った彼の人ですか?
何かあると判っていたのに見て見ぬ振りをした
視界が滲んでいく。しかし零してはいけない。
『私はまだあの頃から抜け出せていません。
ずっと夢に見るんです。彼の人がお酒を片手にいろんな話をしてくれるあの光景が……今でも脳裏に焼き付いて離れない』
彼の死が受け入れられなくてまだ墓場にも行けていない。合わせる顔もない
『次こそは絶対に間違えない。自分を犠牲にしてでも必ずこの街を、世界を……』
彼女は震える声で言葉を零し走って行った
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らしろ(プロフ) - シアトルさん» 優しいと思えば、意外と裏切られる芥川ちゃんでした(笑) (2018年9月7日 17時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
シアトル(プロフ) - 太宰さんは相変わらずクソであった…でめたし、でめたし…? (2018年9月7日 0時) (レス) id: 93e9cd7354 (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - 埴輪型竹輪さん» そのまさか……かも?しれないです(笑)ご期待ください! (2018年9月3日 23時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
埴輪型竹輪(プロフ) - え......まさかあの方と関係が...! (2018年9月3日 22時) (レス) id: 4f1c00f9fa (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - 鈴さん» まさか……!です(笑)、次にご期待ください! (2018年9月3日 21時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らしろ | 作成日時:2018年7月3日 21時