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第二十八話【未知の未来】 ページ29

急なお誘いに織田さんは目を丸くする。
太宰君も驚いて……はなかった。
判っていたというように微笑んでいた。




「うん、織田作にピッタリだ」



『なに云ってるの?太宰君も勧誘しようと思っているんだけど』



「えっ?私も?」




当たり前だ、織田さんを引き入れるのなら太宰君にも来てもらいたい。
彼等が来てくれたらこの上嬉しいことはない。




「……しかしな、中里。ポートマフィアはそう簡単には」



『織田さんは多大な功績があるでしょう?それを利用するんです』




ニヤリと笑う私に織田さんは少し考える。
太宰君はというと目を伏せて先程から口を開かない。




『太宰君は』



「……私はやめておくよ」



『……何故?』




そう云うと目を開けて私をじっと見つめる。




「私はマフィアに残る。それが……未知の未来さ」




最後の言葉はよくわからないが、私がいくら抗議しても太宰君の考えは変わらなかった。




「織田作は行きなよ」



「だが太宰が行かないのなら」



「なぁに私は一人で大丈夫。織田作は武装探偵社の方がお似合いだ」




太宰君だって似合うと思うのだが。

そう云ってもはぐらかされた。




「首領には私からも云っておく。心配無用だよ」



『頼もしいねぇ』



「……ありがとう、太宰」




話が纏まり、空を見上げれば星が輝いていた。

織田さんは、帰るかと云った。




『じゃあタクシー太宰君、異能特務課までお願いね』



「……本当に異能特務課だったのか」



「そこに子供達と親爺がいるのか」



『うむ!ちょー安全地帯よ!』




太宰君が運転しようとすると織田さんがそれを止める。
聞けば太宰君の運転は物凄い酔うらしい。
なので運転は織田さんに任せる事にした。




「ちぇっ、まぁいいか。Aとイチャイチャ出来るし」



『イチャイチャはしないよ太宰君』




ここからは慥か三十分くらい掛かる。
それ迄は太宰君とお喋り。




「ふふっ、可愛いね。A」



『……成る程、そうやって世の女性を堕としているんですね』



「うーん、私が甘い言葉を囁くのは君だけなんだけどなぁ」



『ほう、お上手。如何すればそんな言葉が出てくるの?』



「……あーあ、前途多難」



『……太宰君?』



「頑張れ、太宰」




織田さんも太宰君の味方か。
そう思いながら黒い車はヨコハマの街を静かに走ったのだった。




───噛み合わなかった音はだんだん規則正しく音を紡ぐ


.

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らしろ(プロフ) - 有栖川.さん» コメントありがとうございます。可愛いと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります、引き続きお楽しみ下さい! (2020年5月26日 21時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 織田作、、可愛い…。更新頑張ってください!! (2020年5月26日 19時) (レス) id: 365395094b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らしろ | 作成日時:2019年6月21日 18時

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