第二十二話【ズレていく】 ページ23
『……じゃあ、今日だけね』
───何か噛み合わない音がした。
『……?』
「やったぁ!」
少女は嬉しそうに蒲団にダイブする。
今のうちに福沢さんに連絡しておこう、と携帯を取り出す。
『……あっついでに織田さんにも』
電話で二人に事情を話して事務所に泊まることを伝える。
「お姉ちゃん!名前は?」
『ふふ、中里Aだよ』
ふわりと微笑んで騒がしい子供達を数時間掛けてなんとか寝かしつけたのだった。
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『……ん』
鼻をくすぐるいい香りに目を薄らと開ける。
何やら美味しそうな匂い……咖喱か?
「おや、おはよう」
『……?おはよう……ございます?』
机の上にはたくさんの咖喱と見知らぬおじさん。
幻覚か?と目を擦るとおじさんは笑った。
「織田作ちゃんから君の事を聞いてね。お礼に咖喱をと思って飛んできたんだ」
どうやら織田さんの知り合いらしい。
優しい笑顔のおじさんに私はほっと胸を撫で下ろす。
『そうでしたか。すみません、態々ありがとうございます!』
時計を見ると正午に近かった。
……どれだけ寝たんだろう、私。
朝ご飯と思ったら昼ご飯だ。
ここまで長居する筈ではなかったのに……申し訳ない。
「子供達を起こすか」
おじさんは子供達が寝ている部屋へと歩いていく。
私はトイレを済ませ、洗面台で顔を洗う。
ベランダへ出ると陽光の差し込み暖かかった。
『んん〜!久し振りに時間気にせず寝たなぁ!今日はバイト休みでよかっ……』
事務所の横にある広い共同駐車場に苔色のバスが一台停った。
何か嫌な予感がした。
だいたいその予感というものは当たる。
────とある組織に狙われているかもしれない
昨日の織田さんとの会話を思い出す。
そうだ、この子達がこの場所にいるのは敵から逃れる為だ。
私はしゃがんで車から出てくる人を見る。
灰色のボロボロのフードを被った人が数人、車から出てきた。
その手には────
『……銃なんて持ちやがって』
ボソリと呟いて急いで部屋へ戻る。
丁度、子供達が着替え終わり咖喱を食べようと各々席に着こうとしていた。
『……皆、部屋に戻って。』
「……お嬢ちゃん?如何したんだい?」
『……敵が来た』
そう云えばおじさんは顔を青くする。
子供達も私達の雰囲気で察したのか少し怯えていた。
『……大丈夫、私が守るから』
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らしろ(プロフ) - 有栖川.さん» コメントありがとうございます。可愛いと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります、引き続きお楽しみ下さい! (2020年5月26日 21時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 織田作、、可愛い…。更新頑張ってください!! (2020年5月26日 19時) (レス) id: 365395094b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らしろ | 作成日時:2019年6月21日 18時