第十三話『湯豆腐ノ温カサト』 ページ14
──夕刻
『鏡花、夕御飯食べろ』
鏡「要らな」
『食べろ』
牢屋から鏡花を無理やり出して執務室へ向かう
何時も“要らない”と云って食べ物を口にしないのだ
『座って待ってろ』
其処にある(改造して芥川好みにした)台所に行き
鏡花が座っている目の前の机の上に鍋を置く
『湯豆腐、好きだろう』
鏡「……!」
『姐さんもお前があまり食べ物を口にしないからと心配していた、少しは食べろ』
お茶碗にご飯をよそって、湯豆腐をお椀に盛り付ける
その間、鏡花は目を輝かせて凝視していた
『冷めないうちに食べろ』
鏡「いた……だき、ます」
鏡花はおずおずと手を伸ばして箸を持ち湯豆腐を食べた
口に入れた瞬間、固まって目を見開いたが、またモグモグと口を動かした
『……今の間は何だ』
鏡「橘の湯豆腐よりも美味しいから」
『橘の湯豆腐の方が美味しいと思うが』
鏡「……そんな事ない」
不味いのかと思ったと、芥川は肩の力を抜いて息を漏らす。
鏡花の食欲は凄く、鍋いっぱいにあった豆腐が無くなろうとしている。
『たくさん食べるのはいいことだ、だがゆっくり食べろ、湯豆腐は逃げはせん』
鏡「あまりに温かくて……つい」
『……そう、か』
無表情だった鏡花の口元が少し上がっているように見えた
━━
━
台所でデザートと紅茶の用意をしていた
姐さんから貰ったロールケーキを皿に乗せている時だ
ふと視線を感じ横を見る
『……如何した?』
鏡「……」
台所の入口で鏡花が立っていた
此方の様子を伺うようにじっと芥川の顔を見つめる
『毒が盛られてないかの確認か』
鏡「如何して」
『ん?』
鏡「如何して貴女は温かいのに此処に居るの?」
その言葉に手が止まる
鏡花は光のない目で不思議そうに首を傾げた
鏡「私を殺してと云った時も」
半年前の事だ
真っ黒い目で“夜叉を殺し、主である私も殺して”と芥川の前に現れたのだ
鏡「私を殺さず、抱き締めた」
“生きろ”と力強く鏡花に云ったのだ。
それから暗殺の仕事を任され、全うした鏡花だったが、芥川は一度も仕事について褒めなかった。
むしろ鏡花の心配ばかりしていた
鏡「私が仕事を終わらせた後、直ぐに駆けつけてくれて心配してくれた」
『貴様が任務を失敗してないか心配でな』
鏡「違う」
ギュッと携帯を握り締め芥川に近付く
鏡「私は貴女のその温かい嘘が好き」
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らむしろっぷ(プロフ) - りんさん» いいですね!私は忙しくてその日に食べれなかったです……(;_;) (2018年6月27日 14時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 太斎さんの誕生日ケーキ食べましたよ(*´∇`*) (2018年6月25日 23時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)
らむしろっぷ(プロフ) - りんさん» 私の一番の推しは太宰さんです!カッコイイですよね!! (2018年6月25日 23時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 太斎さんもいいですよね (2018年6月23日 23時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)
らむしろっぷ(プロフ) - りんさん» 次巻に期待しましょう!それまで信じましょう(;_;) (2018年6月23日 23時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らむしろっぷ | 作成日時:2018年5月19日 20時