swim３ ページ3
ハルちゃんの合図でプールにて練習を始める男子4人。
まぁ練習と言ってもまずは水中で筋力トレーニングからやってるわけで、原田くんはやる気をなくして何かぼやいてた。
原田) ｢なんか思ってたのと違〜う！！！
俺、オリンピックっぽい凄いのやりに来た！！！｣
秀平) ｢そのためには、こうやって基礎が大事なんだよ｣
原田) ｢だってこんな地味なのもうやってらんないっすよ〜｣
滝) ｢水泳初心者がよく言うよ。
スタイルワンだって決まってないんでしょ｣
原田) ｢なにそれ｣
A) ｢それぞれ大会に出る時の専門種目。自分の得意種目って言ったら分かりやすいかな？S1って書いてスタイルワンね｣
原田) ｢へぇ〜なんかカッコイイっすね。んで結太は何なの？｣
滝) ｢…長距離｣
A) ｢えっ…滝くんのS1って長距離なの？｣
滝) ｢えっ、はい。そーですけど…｣
原田) ｢あれ？A先輩も中学まで水泳やってたんすよねぇ？スタイルワンなんだったんすかぁ？｣
A) ｢私は個人メドレー｣
原田) ｢んっ？メドレー…ですか？｣
秀平) ｢一人でバタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、自由形の順で同じ距離ずつ泳ぐ競技のことだよ｣
滝) ｢ほんとに何も知らないんだな。
A先輩は大会に出れば1位の常連者、中学生にしてオリンピックを期待された水泳界では誰もが知る凄い選手だったんだぞ｣
原田) ｢そんな凄かったのになんで辞めちゃったんすか？｣
A) ｢…うん、まぁ…色々あってね(笑)｣
晴美) ｢こらー！真面目にやるー！全身の筋力強化には水中エクサが1番なんだからね！！！はい、あと20分よ！！！！｣
A) ｢じゃあハルちゃん、私ドリンク作ってくるね｣
晴美) ｢はーい！お願いね！｣
ハルちゃんの軽快なリズムを刻む手拍子を背中で聞きながら、ボトルを持ってプールサイドから立ち去った。
(なんで辞めたか…ねぇ)
2年生組には話したから知ってるけど、さすがにまだ1年生の2人には話しにくいな〜。
水道の蛇口をひねり、水がボトルに溜まっていく。
(はぁ…“水中が怖くて辞めました”…なんて、元水泳選手がいう言葉じゃないもん…)
ボトルに溜まりきった水が静かに溢れていた…。
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作者名：HINANO | 作成日時：2020年7月11日 17時
