swim１７ ページ17
A) ｢藤川くん！｣
礼央) ｢ん？｣
シャワー室に入っていこうとする藤川くんを呼び止めた。
振り向く藤川くんの顔にさっき見えた表情はもうなかった。
A) ｢あの…｣
礼央) ｢あのさ…俺たち龍峰が怖かったりする？｣
A) ｢えっ、怖くないけど…どうして？｣
礼央) ｢いや、練習中とか声かけに来る時いつも怯えてる様に見えたからw｣
A) ｢あっ、そう見えてた？｣
礼央) ｢男しかいない中に放り込まれて怯えてんのかと(笑)｣
A) ｢東ヶ丘も男しかいません(笑)｣
礼央) ｢あ〜そっか｣
見た目は少し厳つい感じだけどこうして話すと全然そんなことなくて、むしろ親しみやすい。
学年関係なく人気なことに納得がいく。
礼央) ｢…あいつら、どう？｣
A) ｢秀平くんと大樹くんのこと？｣
礼央) ｢そう。…俺昨日の部活帰り偶然2人にあって、大樹が部活行ってないこと聞いたんだ｣
A) ｢…うん｣
礼央) ｢それで俺さ、｢やる気ないなら水泳辞めちまえよ｣って…ついカッとなって言っちまったんだよ｣
3人の過去に何があったかは知らない。
でも幼い頃からずっと3人で水泳をしてきたことは聞いた。
だから藤川くんが大樹くんに言った言葉は本心じゃない。
ほんとは秀平くんにも大樹くんにもちゃんと水泳続けてほしい。
そう願っているからつい本心じゃないこと言っちゃったんだね。
だって今の藤川くん…ほんとにやめたらどうしようって、自分が言った言葉に後悔してる顔してるもん。
A) ｢…藤川くんって、負けたくない相手っている？｣
礼央) ｢えっ？｣
A) ｢なんか、藤川くんの泳ぎ見てたら思っちゃって…誰か意識して泳いでるな〜って｣
ほんとは聞かなくても気づいてた。
藤川くんは同じS1の大樹くんを意識している。
幼なじみ3人の中で後から水泳を始めた大樹くんは藤川くんに泳ぎを教えてもらってたって秀平くんが言ってた。
だから泳ぎ方が似てるんだなって私は思った。
A) ｢大丈夫…大樹くんは今、秀平くんや藤川くんとちゃんと泳ぎで向き合うためにまずは自分と真剣に向き合ってるだけだから｣
藤川) ｢…なんだそれ(笑)｣
A) ｢ほんとだもん…たぶん(笑)｣
これからどう向き合っていくのかは3人次第。
あぁ…私もいい加減に自分の過去と向き合わなきゃな…。
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作者名：HINANO | 作成日時：2020年7月11日 17時
